イージス駆逐艦ラファエル・ペラルタ、石垣港の軍事利用を強行

クルーズ桟橋から乗組員上陸





観光船と駆逐艦ラファエル・ペラルタ(24.3.11 木元 撮影)


検疫錨地に停泊したラファエル・ペラルタ(24.3.11 木元 撮影)


タグボートが接岸した(24.3.11 木元 撮影)


最初に上陸した海軍中尉(24.3.11 木元 撮影)


抗議する人々(24.3.11 木元 撮影)


観光バスに乗る、ラファエル・ペラルタの乗組員(24.3.11 木元 撮影)


ラファエル・ペラルタ乗組員の上陸のために急遽設置されたゲート(24.3.11 木元 撮影)


10日夕刻までクルーズ岸壁に停泊していた客船アザマラジャーニー(24.3.10 木元 撮影)


桟橋の看板(24.3.10 木元 撮影)

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■強引に石垣港から上陸した米海軍
米海軍から横須賀を母港とするイージス駆逐艦ラファエル・ペラルタ(RAFAEL PERALTA DDG 115 艦名はイラク戦争のファルージャの戦闘で2004年に戦死した米海兵隊の三等軍曹の名前をとっている。2017年就役の新鋭艦)の入港について打診があり、石垣市が入港予定の南ぬ浜町のクルーズ船岸壁が「技術上の基準」を満たしていない」(水深不足)として入港不可との判断を示したのは2月9日であった。
この時点で入港をあきらめるだろうと私は思っていた。しかし、米海軍は強引であった。
3月に入ってからの経過を新聞報道で追ってみる。

3月4日、石垣市議会には「寄港反対決議案」が提出されたが、賛成8人(野党)、反対11人(与党・中立系)で否決された。
米海軍は3月7日、小型船接岸のための岸壁使用許可を、代理店を通じて石垣市に提出。
市は「必要な書類が整っていない」として「保留」の扱いにした。
沖縄県知事公室長は3月8日、在日米海軍司令官、在沖米国総領事館、外務省日米地位協定室に「米軍艦艇による民間港湾の使用は緊急時以外は自粛すべきだ」、「ホワイト・ビーチ地区などの提供施設を利用すべきだ」と口頭で申し入れた(「琉球新報」3月9日)。

一方、石垣市は9日の時点でクルーズ岸壁からの上陸を認めたようだ。
中山市長は「上陸方法の安全性が確認され、海保への入港手続きも完了しており、拒否する理由はないので許可した」と取材に答えている。
クルーズ岸壁には、「この施設内は「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」に基づき、制限区域に指定されていますので関係者以外の立ち入りを禁止します」との表示があった。
ラファエル・ペラルタの「乗員の上陸に先立ち、米軍関係者が委託業者に対し、クルーズバースの駐車場にバリケード設営を指示」と報道されている(「八重山日報」3月10日)。10日夕刻に同岸壁に停泊していた客船アザマラジャーニー(総トン数30,277、全長180m)が出港したあと、高さ2mのフェンスが設置された。10日には自由に出入りできた駐車場も、11日には高さ2mのフェンスが張られ門も作られて、2名のガードマンが入場を厳しく制限していた。

■「検疫錨地」に停泊、タグボートとテンダーボートで乗組員上陸
ラファエル・ペラルタは、3月11日午前7時半頃、石垣港の沖合に姿を現した。微速で前進し、8時30分頃、防波堤手前の「検疫錨地」で錨を降ろした。
10時40分頃、「貸切」と書かれた観光バスが南ぬ浜ビーチの駐車場に入った。
10時50分頃、最初の上陸者である海軍中尉が一人だけ制服姿で上陸した。二人目が何時に上陸したのかは不明だが、乗組員が次々に降りて来たのは14時過ぎから。観光バスに乗り込んで次々に市内に向かった。
艦長のスティーブン・ザクタ中佐は報道陣の取材に対して、「西太平洋地域でパトロールをする中で、必要な補給をするために寄港した。私たちがパロールする上で石垣島が一番近かった。補給地点には適している。スケジュールや位置的に石垣島に白羽の矢が立った」と取材に答えた。まさに石垣を補給拠点として使用したいという意図がありあり。

■ラファエル・ペラルタの2日から10日までの航跡は非公開
クルーズ船岸壁に停泊していた客船アザマラジャーニーの寄港地はホームページに発表されている。3日ホーチミンー5日ダナンー7日香港−9日台北-10日石垣島-11日那覇−13日鹿児島である。
対照的にラファエル・ペラルタの航跡は、3月1日ルソン海峡(台湾とフィリピンの間のバシー海峡、バリンタン、ハブヤン海峡の総称)を通過したことがわかっているだけだ。2日から10日までの行動は不明である。米海軍HPは「フィリピン海をルソン海峡付近で通過し、定例作戦を実施中」とのみ発表している。

気になるのは2月25日から3月17日まで、キャンプハンセン、沖永良部島などで実施された日米共同演習アイアンフィストとの関連である。海自の大型揚陸艦「くにさき」、米海軍の強襲揚陸艦アメリカ、ドック型輸送揚陸艦グリーンベイ、ドック型揚陸艦ラッシュモアが参加している。
「くにさき」とアメリカ、グリーンベイは、3月7日から16日まで「九州西方及び東シナ海から沖縄周辺」で行われた日米共同訓練にも参加した。掃海艦「えたじま」、掃海艦ウォーリアも参加し、船舶誘導訓練、立入検査訓練等を行っている。ラファエル・ペラルタは、この二つの訓練と連動した行動をしてはいなかっただろうか。

統合幕僚監部の発表によれば3月9日、中国軍の哨戒機が東シナ海から宮古海峡を通過したあと南西方向に向かい、石垣島の南方200kmくらいの地点を飛行した。
ラファエル・ペラルタが入港した翌日12日には、中国軍の情報収集機1機とH-6爆撃機2機が石垣島の南方100kmあたりを飛行している。対艦弾道ミサイルも搭載可能な爆撃機である。空自の戦闘機が緊急発進して対応している。

 イージス艦ラファエル・ペラルタは抑止どころか、中国軍のそれなりの対応を引き出してしまったとは言えないか。

(木元 茂夫)




統合幕僚監部が3月12日に発表した中国軍機の航跡


2024-3-21|HOME|