米情報機関の報告書、「2027年台湾侵攻説」を否定


米国政府の情報機関の連合体が発表した報告書『米国の国家安全保障に対する世界的な脅威に関する年次報告書2026』の表紙

米国政府の情報機関の連合体(IC:The United States Intelligence Community)による報告書、『米国の国家安全保障に対する世界的な脅威に関する年次報告書2026』(2026 Annual Threat Assessment of the U.S. Intelligence Community)が発表された。

これは2021会計年度情報機関授権法第617条にもとづいて毎年発表されるもので、今回の2026年版の報告書は、2026年3月14日の時点で入手可能な情報をもとにまとめられている。
本文は33ページで、表や図や写真を一切使わず文字情報のみの文書となっており、分野別さらに地域別に、脅威とされている事柄の現況についての簡潔な記述と見解が列挙されている。

すでに日本のマスメディアでも報じられているので「今さら」の感も強いが、敢えて、この報告書で米国政府の情報機関が中国の「脅威」と高市首相の言動についてどのような認識を示しているのか、以下に簡単にまとめておこう。

まず、今回の報告書で示されている中国にかんする認識のなかで注目すべき点は、「情報機関(IC)は、中国指導部が現在、2027年に台湾侵攻を計画しておらず、統一達成のための具体的な期限も定めていないと評価している」と述べている点だ(報告書22頁)。

2021年3月9日に米連邦議会上院の軍事委員会公聴会で、当時の米インド太平洋軍フィリップ・デービッドソン司令官が、「中国が2027年までに台湾に進行する可能性がある」という趣旨の証言をしたことは記憶に新しい。
しかし、米情報機関による今回の報告書は、その「2027年台湾侵攻説」を否定するものになった。

同報告書は、「中国は公然と、2049年(中華人民共和国建国100周年)までに「国家復興」という目標を達成するためには、台湾との統一が不可欠であると主張している」ものの、「北京は紛争を回避し、台湾との最終的な統一に向けた条件整備を引き続き模索する可能性が高い」と述べている。

また、「中国は、必要であれば武力行使による統一を強行する構えを見せ、米国が台湾を利用して中国の台頭を阻害しようとしていると見なしているものの、可能であれば武力を用いずに統一を達成することを望んでいる。人民解放軍(PLA)は、指示があれば武力を用いて統一を達成するための軍事計画と能力の開発も継続している」とも述べてはいるのだが、米国政府の情報機関が「2027年台湾侵攻説」を否定したことの意味は小さくは無いはずだ。

もう一つ、報告書の注目すべき点として、高市首相の、2025年11月7日の衆議院予算委員会での「(台湾有事は)存立危機事態になり得る」という発言について、「現職の日本首相としては大きな転換点となる」と指摘していることが挙げられる(報告書23頁)。

同報告書は、「存立危機事態」とは2015年安保法制に基づき「軍事当局(訳注:自衛隊)の権限行使の法的根拠となり得る」事態であること、すなわち自衛隊の武力行使の根拠になり得る事態であることを指摘しており、それ故に「中国は、高市首相の発言を、1972年の日中共同声明および1978年の日中平和友好条約に違反する、事態をエスカレートさせるものと捉えた」ことも指摘している。

さらに、高市首相の発言をきっかけとした緊張がエスカレートし、「事故や誤算による意図せぬ事態の悪化のリスクを高める可能性がある」と報告書は指摘する。
つまり、同報告書は、高市氏の発言の危険性を指摘しているのだ。もちろんこれは、米国政府の情報機関に言われるまでもなく、誰の目にも明らかなことではあるのだが。

高市政権は、米国の情報機関からさえも危険性を指摘されてもなお、中国に対する「いきり」の態度をとり続けて緊張状態を自ら創り出していくつもりなのだろうか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔) 


2026-3-30|HOME|