那覇軍港に向かったとみられる民間自動車運搬船

2023年7月10日、海兵隊の砲撃演習のための装備を那覇軍港から横浜ノースドックに運んだ日本通運の自動車運搬船「ひまわり8」。
今回は同社の「ひまわり7」が東京から那覇に向かっており、那覇で榴弾砲や車両などの装備を積んで横浜に向かうとみられる(23.7.10 星野 撮影)
5月8日の夜、日本通運の自動車運搬船「ひまわり7」が東京港を出港した。AIS(船舶自動識別装置)に表示された目的地は「NAH」(那覇)だ。
普段は同社の「東京〜苫小牧・釧路」航路で運航されている「ひまわり7」としては、異例の行き先だ。
この自動車運搬船はなぜ通常の航路を外れて那覇に向かったのか。
謎を解く鍵は、横浜市基地対策課HPと、防衛省HPの調達情報にある。
今年4月、横浜市基地対策課HPに、防衛省が4月17日に発した「お知らせ」の「沖縄県道104号線越え155ミリ榴弾砲実弾射撃訓練の分散・実施について(北富士演習場関連)」が掲載された。
この「お知らせ」によれば、「沖縄県道104号線越え155ミリ榴弾砲実弾射撃訓練の分散・実施のため」、5月18日から27日にかけて北富士演習場で155ミリ榴弾砲の実弾射撃演習が実施される。これは海兵隊が定期的に行っている実弾射撃演習だ。
この演習のために、中隊規模の約300名、約40両の車両、6門の「砲」の訓練部隊が、5月中旬に富士山麓の海兵隊基地であるキャンプ富士に到着する。
富士山麓での海兵隊実弾射撃演習の「お知らせ」が、横浜市基地対策課HPに掲載されるのは、榴弾砲を含む海兵隊部隊の装備が横浜ノースドックに陸揚げされ、横浜市内の道路を通過して、富士山麓まで運ばれるからだ。
では、榴弾砲や車両などの海兵隊の装備は、沖縄から横浜まではどのように運ばれるのか。
米海兵隊自らが実施する演習で使うために大砲や車両などを運ぶのだから、米軍の輸送艦を使って、あるいは、米軍が自ら貨物船をチャーターして、米軍の「自腹」で海兵隊を運ぶのかというと、実はそうではない。
それを説明するのが、防衛省HPに掲載された調達情報だ。
防衛省HPに掲載されている内部部局の入札公告等に、「実弾射撃訓練の移転(北富士)に伴う輸送等役務」の契約が4月17日に締結されたという情報が掲載されている。
この契約情報こそが、まさに今回米海兵隊が北富士演習場で行う実弾射撃訓練の輸送業務の契約情報なのだ。
防衛省が契約情報を発表するということは、この、米軍が自らの実弾射撃訓練のために移動する輸送費を、日本政府が日本の税金で支払うということを意味している。
つまり、米海兵隊の「沖縄県道104号線越え155ミリ榴弾砲実弾射撃訓練」の「分散・移転」の輸送費は、今回に限らず日本の税金によってまかなわれ、その輸送の「役務」は日本政府によって日本の民間企業に発注されてきたのだ。
そして今回、それを受注したのが、日本通運株式会社だったというわけだ。
5月8日の夜に自動車運搬船「ひまわり7」が定期航路を外れて東京から那覇に向かったのは、まさにこの輸送役務を実施するためとみて間違いないだろう。
日本通運は、これまでもしばしばこの「輸送等役務」を担ってきた。
たとえば最近では、2023年に同社の自動車運搬船「ひまわり8」が海兵隊部隊の装備を那覇軍港と横浜ノースドックの間を往復して輸送する役務を担った。
そして今回、海兵隊の輸送を担う「ひまわり7」も、2019年5月にも海兵隊が富士山麓の実弾射撃演習で使用した装備を横浜ノースドックから那覇軍港に輸送する役務を引き受けている。
だが、とりわけ今、2026年5月前半の時点でこの役務を担うということは、「停戦協議」が続けられているとはいえ、米軍が国際法に違反してイランに戦争を仕掛け、世界を混乱に陥れている最中に、その米軍のために働くことを実質的には意味することになる。
同社グループの「行動憲章」は、「人権の尊重」、「各種の国際規範の尊重」、「市民社会の秩序や安全に脅威を与えるあらゆる反社会的勢力および団体とは断固として対決し、関係遮断を徹底」すること、などを掲げている。
こうした「行動憲章」を持つ企業が、直接戦地に兵士や兵器を送る仕事ではないにしても、あえて現時点において、米軍を輸送する役務を請け負うことについて、同社の経営幹部はどのように考えているのだろうか。
ところで、5月9日の夜の時点でAISに表示されている「ひまわり7」の那覇(おそらくは那覇軍港)へのETA(到着予定時刻)は5月11日18時となっているが、実はAISに表示されるETAは必ずしも当てにはならない。那覇軍港への到着はもっと早い日程・時間になるのではないか。
ともかく、間もなく、那覇軍港に「ひまわり7」が接岸し、海兵隊の兵器や車両などの装備の積み込みを行うことはほぼ間違いないだろう。
では、「ひまわり7」が海兵隊部隊の兵器や車両などを積んで横浜ノースドックに入港するのは、いつになるのか。
海上保安庁東京湾海上交通センターHPに5月9日の夜の時点で掲載されている情報によれば、「ひまわり7」の浦賀水道への入航予定時刻は5月13日の8時15分で、もちろん目的地は横浜だ。
この浦賀水道入航予定時刻も今後変更になる可能性はあるが、現時点では、「ひまわり7」が横浜ノースドックに接岸して、那覇軍港から運んできた海兵隊の兵器や車両などの装備を陸揚げするのは5月13日の午前から、ということになりそうだ。
これまでの「沖縄県道104号線越え155ミリ榴弾砲実弾射撃訓練」の装備の輸送と同様であるならば、接岸後、すみやかに陸揚げ作業が開始され、降ろされた兵器や車両などは、順次キャンプ富士に運ばれていくということになるだろう。
(RIMPEACE編集部 星野 潔)

北富士演習場での海兵隊砲撃演習についての防衛省の4月17日付け「お知らせ」(横浜市基地対策課HPより引用)

防衛省HPより引用
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