台湾をフィリピンから睨むバリカタン2026


米軍画像検索サイトDVIDSより。2026年4月27日、負傷兵救出訓練に向かう海自の救難飛行艇とボート
「Balikatan 2026: Task Force Ashland participates in a casualty evacuation exercise with JMSDF [Image 11 of 15]」
https://www.dvidshub.net/image/9653228/balikatan-2026-task-force-ashland-participates-casualty-evacuation-exercise-with-jmsdf



4月17日に台湾海峡を通過した後、バリカタン2026に派遣された護衛艦「いかづち」(26.4.5 木元 撮影)


米軍画像検索サイトDVIDSより。2026年5月6日、陸自の88式地対艦ミサイルと米軍の無人対艦ミサイル「ネメシス」。
最前列中央の白い軍服の人物の右側、小泉防衛相。その右、フィリピンのテオドロ国防相
「Balikatan 2026: 3rd MLR participates in JTF MARSTRIKE [Image 2 of 2]」
https://www.dvidshub.net/image/9664548/balikatan-2026-3rd-mlr-participates-jtf-marstrike


米軍画像検索サイトDVIDSより。フィリピン最北部のイトバヤット島に空輸された米軍の高機動ロケット砲システム・ハイマース。
ロケット弾とミサイルの双方が搭載可能で最大射程は200kmで、バシー海峡を通過して台湾に接近又は侵攻する艦艇・部隊を攻撃することが可能
「Balikatan 2026: 317th AW, 25th ID perform HIRAIN in Itbayat, Philippines [Image 6 of 18]」
https://www.dvidshub.net/image/9639916/balikatan-2026-317th-aw-25th-id-perform-hirain-itbayat-philippines

●演習の概要
米インド太平洋軍司令部はバリカタン2026について、次のように解説している。
「 フィリピン軍と米軍は、4月20日から5月8日までフィリピン諸島全体で第41回演習バリカタンを実施します。 フィリピン、アメリカ、オーストラリア、日本、カナダ、フランス、ニュージーランドから17,000人以上の人員が肩を並べて訓練し、さらに17か国が国際オブザーバープログラムに参加します。この演習では、航空、陸、海、宇宙、サイバー分野にわたる最先端の訓練が行われます。主なイベントは以下の通りです。フィリピン軍と米軍は、困難な訓練シナリオを乗り切るために合同任務部隊を設置することで指揮統制能力を磨きます」。
「 フィリピン全土での野外訓練演習は、海上安全保障、沿岸防衛、連合および統合火力における戦闘技術のリハーサルを行うキャップストーンイベントで締めくくられます」。

●自衛隊の参加規模の増大
自衛隊は昨年からこの演習に正式参加した。
参加人数は150人から1400人へと急激に増加した。その中核は佐世保を中心に配備されている上陸作戦の専門部隊=水陸機動団である。
派遣艦艇も機雷戦能力をもったもがみ型護衛艦「やはぎ」1隻だったのが、水陸機動団の隊員と装備を搭載する大型揚陸艦「しもきた」(第1水陸両用戦隊、呉)、水陸両用戦機雷戦群旗艦ヘリ空母「いせ」(佐世保)、そして、横須賀配備の護衛艦「いかづち」の3隻となった。これは揚陸作戦を想定した編成である。
陸自の戦闘部隊が1個連隊(科によって人数は異なるが約1000人)の規模で派遣されるのは、オーストラリアの広大な演習場で実施されている「タリスマン・セーバー」に続いて2例目である。

●ミサイルの重層的な配備
今回の演習の最大の特徴は、各種ミサイルの重層的な配備である。
まずは、台湾と180kmしか離れていない、フィリピン最北部のイトバヤット島に米軍の高機動ロケット砲システム・ハイマースを搬入した。次にルソン島北部のカガヤン北空港に無人対艦ミサイル「ネメシス」(Navy Marine Expeditionary Ship Interdiction System の略。直訳すれば海軍・海兵隊遠征艦阻止システムだろうか)を搬入。陸自の88式地対艦ミサイルも加わる。そして、2024年のバリカタン演習以来、米軍がフィリピンに残置しているタイフォン・ミサイルシステム(トマホークと対艦・対空ミサイルSM-6を組み合わせたもの)。
また、今回の演習では補給物資の搬入と配送も重視された。
後方拠点として重視されたのはミンダナオ島である。「艦から陸への装備の荷降ろしや移動を通じた、動的な海上維持と分散物流。バリカタン2026開始前に、フィリピン軍と米軍はカガヤン・デ・オロ港(ミンダナオ島)で海上前置部隊輸送船からの装備と物資の荷降ろしを行い、ルソン島全域に輸送・配布しました。訓練支援のため、物資や装備の移動・配布は演習中も継続されます」としている。
また、第7艦隊広報部は艦艇の活動について、
「オーストラリア、カナダ、米国は南シナ海で多国間作戦を実施しています 。南シナ海 ? オーストラリア海軍、カナダ王立軍、アメリカ海軍の艦船が、4月12日から18日にかけて南シナ海で自由かつ開かれたインド太平洋を支援する多国間作戦を実施しました。 参加者には、オーストラリア海軍アンザック級フリゲート艦HMASトゥーンバ(FFH 156)、カナダ空軍のスーパーピューマヘリコプター、カナダ海軍ハリファックス級フリゲート艦HMCSシャーロットタウン(FFH 339)、そして海兵隊員を乗せたドック型揚陸艦USSアシュランド(LSD 48)が含まれていました」と述べている。
この直前の艦艇の動きとは別に、4月27日には「統合衛生訓練」の一環として、海自の救難飛行艇US-2が参加国兵士の救難輸送訓練を実施している。

●中国海軍の対抗演習
「米海軍協会ニュース」は、バリカタン演習に対する中国軍の動きを次のように伝えている。
「「現状の地域情勢」に応じて、人民解放軍南部戦区司令部はバリカタン作戦中にルソン島周辺で多数の軍艦と航空機を出撃させ、人民解放軍の演習を行いました。 先週、人民解放軍は、055型駆逐艦「遵義」(107)、052D型駆逐艦「合肥」(174)、054A型フリゲート「咸寧」(500)、補給艦「羅馬虎」(907)からなる中国人民解放軍海軍の水上作戦部隊「タスクフォース107」による実弾訓練を公開しました。司令部から公開された映像には、無人航空システムを発進させ、敵の航空・ミサイルの脅威に対する自衛訓練を行い、主砲の実弾射撃演習を行っている様子が映っています。また、中国人民解放軍は海上攻撃を専門とするH-6爆撃機も派遣しました。 水上戦闘群の2隻の駆逐艦は、HHQ-9地対空ミサイル、YJ-18巡航ミサイル、そして同軍の近年注目されているYJ-20極超音速対艦弾道ミサイルなどさまざまなミサイルに対応可能な垂直発射システムを176基搭載可能です。バリカタン演習に先立ち、南海艦隊司令部は、この高性能精密攻撃兵器の古い試験映像を合同空海戦闘演習の発表資料に含めて公開しました」。
「今年、バリカタン周辺の人民解放軍海軍の対抗演習活動は著しく強化されており、ルソン島東部で活動する水上行動部隊はその最も明確な表れです」。
バリカタン演習は米中間の緊張を、より激化させたようである。

(木元 茂夫)


ルソン島東部での中国海軍の演習 「米海軍協会ニュース」より引用
USNI NEWS「U.S. Missiles Deploy Near Taiwan During Balikatan Exercise, Chinese Action Group Operates Nearby」
https://news.usni.org/2026/04/28/u-s-missiles-deploy-near-taiwan-during-balikatan-exercise-chinese-action-group-operates-nearby


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