宮古・石垣・与那国で「陸上総隊演習(南西)《

航空自衛隊宮古島分屯基地。右側の円筒形の2つは、中国軍の電波情報を収集している「地上電波測定装置《J/FLR-4A。東芝インフラシステムズ製造(26.5.17 木元 撮影)

航空自衛隊第53警戒隊の固定式レーダーサイトJ/FPS-7。日本電機製造。
防衛省・電子開発実験群の資料には「ステルス航空目標等に対する探知能力及び高機動目標に対する追尾能力を備えた警戒管制レーダー《とある。
「高機動目標《とは弾道ミサイル等をさす。その上を陸自の大型ヘリCH-47が飛来した(26.5.17 木元 撮影)

分屯基地のヘリポートに向かう陸自の大型ヘリ。出迎えの白いマイクロバスが待機している(26.5.17 木元 撮影)
宮古島に米軍がやって来るのははじめての事だ。しかも、「日米共同調整所《を設置するという。
どんな訓練をやるのか見に行った。
最初に、今回の演習が「陸上自衛隊演習《ではなく、「陸上総隊演習《となっていることの意味を、自衛隊法の条文から確認しておきたい。
●第十条
陸上自衛隊の部隊は、陸上総隊、方面隊その他の防衛大臣直轄部隊とする。
2 陸上総隊は、陸上総隊司令部及び団、連隊その他の直轄部隊から成る。
●第十条の二
3 防衛大臣は、第六章に規定する行動(注*防衛出動等)、(中略)その他の自衛隊の運用に関し、陸上自衛隊の部隊の円滑な任務遂行を図る必要がある場合には、方面隊の全部又は一部を陸上総隊司令官に一部指揮させることができる。
「団《とは第1空挺団、水陸機動団、第1ヘリコプター団、システム通信団を指す。「連隊《とは中央即応連隊等を指す。
ニュースリリース(訓練広報)に「実施部隊は陸上総隊及び方面隊《となっていることから、方面隊の一部を陸上総隊司令官が指揮したと考えられる。
防衛省が宮古島市に提出した「地元説明資料《には、次のようにある。
【訓練の目的】 陸自部隊の南西地域への機動展開、物資輸送訓練等を通じて、抑止及び対処の実効性向上を図るもの。 また、一部の訓練では、日米の共同調整所を開設し、日米間で指揮所訓練を実施することで、日米の連携強化及び共同対処能力の向上を図る。
【訓練の沿革】 令和8年度に初めて実施
【演習の実施場所及び期間】 演習期間:令和8年5月17日(日)~5月22日(金) ※本期間の前後に、それぞれ約1週間で準備・撤収を実施します。
演習実施場所 沖縄県内の一部の自衛隊施設、平良港、宮古空港、 石垣港、石垣空港、久部良漁港及び北・南牧場 ※保良訓練場は米軍の予備宿泊施設として使用します。
なお、訓練に参加する陸自部隊の人員及び装備品等を民間の航空機及び船舶により輸送するため、宮古空港及び平良港の使用を計画しています。
しかし、宮古島市にやってきた米海兵隊の第12海兵沿岸連隊は、装備品の搬入はほとんどなかった。
平良港から車輛を陸揚げすることもなかった。18日に追加の要員が自衛隊の大型ヘリで宮古空港を使用して輸送されてきただけである。これは予想外であった。
5月19日、中国海軍の最新鋭フリゲート艦「漯河《(艦番545、満載排水量6,000t、全長150m、北海艦隊所属*司令部青島、2025年就役)が、総合補給艦「福裕《(艦番901、48,000t、241m)とともに、宮古海峡を通過した。これは陸自の演習を意識してのものだろうか。
海自は厚木基地所属の哨戒機P-1と、那覇基地所属の哨戒機P-3Cを出動させて、「警戒監視・情報収集《を行なった。
海自は那覇基地にP-1哨戒機を2027年度末までに10機配備すべく準備を進めている。
宮古島とは対照的に多くの物資が搬入されたのは与那国島と石垣島である。
防衛省が与那国町に提示した説明資料には、
「与那国島においては、機動展開訓練、与那国駐屯地内におけるスキャン・イーグルⅡ飛行訓練及び警備訓練 を実施する計画です。 訓練に参加する陸自部隊の人員及び装備品等を民間の船舶により輸送するため、久部良漁港の使用を予定し ています《、「陸上自衛隊約40吊 (スキャン・イーグルⅡ×2機程度、小型トラック×4両程度、中型トラック×1両程度、大型トラック×6両程度、特大型トラック×2両程度、重レッカー車×1両程度 《とある。
物資輸送の拠点となったのは石垣港。
5月16日に、陸自の車両を輸送して来た「ナッチャンNEO《(総トン数8,800t、全長144.1m)と「みかさ《(772t、77.8m)が入港。無人偵察機スキャン・イーグル等を搭載したトラックを「ナッチャンNEO《から「みかさ《に積み替えた。「みかさ《の搭載車両は壱岐・対馬フェリー株式会社の資料によれば、「8m換算=12台、5m換算=40台《となっているので、無駄のない小型船を動員したということだろう。「みかさ《は与那国島に向けて出港した。
「車輛と共に下船した隊員は中部方面隊の所属《(「沖縄八重山日報《5月17日)と報道されているので、スキャン・イーグルの運用担当は四国の善通寺駐屯地所属の第14情報隊と推測される。那覇駐屯地にも第15情報隊がいるが、わざわざ四国の部隊を動員したのは、有事に備えて与那国への出動を経験させるためであろう。
石垣島には88式地対艦ミサイルの発射機1台、96式装輪装甲車5台など計34台が搬入された。
部隊の撤収は、5月22日。「みかさ《が与那国島に入港し車輛13台を搭載して石垣島に向かった。
石垣港には「はくおう2《(16,810t、225m、旅客定員820人)が入港し、「みかさ《からの車輛を積み替えた。
陸上総隊演習では民間船舶が利用されたが、6月20日からはじまる日米共同演習「レゾリュート・ドラゴン2026《では、自衛隊共同の部隊「海上輸送群《が、武器と弾薬の輸送訓練を実施する。有事に備えた補給訓練である。
防衛省の「地元説明資料《には、次のようにある。
「(奄美大島)吊瀬港においては、(鹿児島市の)谷山港から自衛隊海上輸送群の小型級船舶「にほんばれ《により海上輸送した弾薬を搭載した車両及び12式地対艦誘導弾の車両を荷役(揚陸)し、瀬戸内分屯地への輸送訓練を実施する計画です。 また、陸上自衛隊及び自衛隊海上輸送群による補給品コンテナの荷役・輸送訓練を実施する計画です。自衛隊海上輸送群の中型級船舶「ようこう《により海上輸送したコンテナ(補給品及び弾薬を搭載)約90個を、 中央輸送隊のクレーン操作により揚陸。西部方面後方支援隊のフォークリフト操作により同隊のコンテナトレーラに搭載し、瀬戸内分屯地及び奄美駐屯地に輸送します 《
「にほんばれ《は基準排水量2400トン、全長約80m、「ようこう《は3500t、全長約120mである。両艦とも満載排水量は公表されていない。貨物の最大搭載量は明らかにしないということか。
海上輸送も、港湾荷役も、陸上輸送も、すべて自衛隊が担う訓練である。
レゾリュート・ドラゴンは回を重ねるごとに実戦的になり、2025年は9月に実施だったのに、2026年は6月と、3ケ月も前倒しての実施である。
訓練を重ねるごとに高性能のミサイルがもちこまれいる。日米でミサイル戦における役割分担が進んでいく。
(木元 茂夫)

宮古島駐屯地の正門。地対艦、地対空ミサイル部隊、電子戦部隊等が配備され、約700人の隊員が駐屯。左側の建物は家族住宅(26.5.17 木元 撮影)

地元の人々の抗議行動(26.5.17 木元 撮影)

宮古島の南部にある保良訓練場。手前が弾薬庫、奥の建物(長さ約300m)が小銃射撃場。米海兵隊は、今回は宿泊施設として利用しなかった(26.5.17 木元 撮影)
2026-6-14|HOME|