日本政府もオスプレイの危険性を認識−1

普天間場周経路変更の必要性指摘

2016年5月13日の衆議院外務委員会で「オスプレイに関する日米合同委員会(7月26日)(概要)」という文書が共産党笠井議員によって暴露された。
普天間配備のオスプレイがいったん岩国基地に陸揚げされたのが2012年7月23日。その3日後の日米合同委員会の会議録の要旨だ。
日米合同委員会の会議が、オスプレイが本当に安全なのかを確かめるのではなく、どうすれば安全性がアピールできるか、を主要な目的として行われたものであることを示している。

1.オスプレイに関する日本の国内事情
2.分析評価チームの設置
3.低空飛行訓練
4.オートローテーション
5.夜間訓練の増加
6.航空機騒音
7.市街地での飛行回避および海上ルートの飛行
8.例外的な運用制限
9.キャンプ富士と岩国での訓練
10.エンジン調整
11.今後の日米合同委員会会合
12.プレス対応
という順に議論の内容が記録されている。

まともな説明がつかないオスプレイの配備について、なんとか説明ができるようにしてほしい、という日本政府の米側への「お願い」がこの会議録全体にあふれている。その中でも、米側に無視 されて今もって何も対策がとられず何の変更もされていないのが、普天間基地の場周経路問題だ。

上記の4.オートローテーションのテーマの中で、日本側が「オスプレイの両エンジン出力を喪失した場合は、オートローテーションまたは滑空のいずれの場合においても、安全に普天間飛行場内 に着陸できるような場周経路を設定する必要がある旨」指摘した。
これに対する米側の応答は「普天間飛行場の場周経路については専門家にも確認する必要があるが、いずれにせよ、合同委員会でも議論を継続したい」という趣旨のものだった。

普天間飛行場の場周経路が、オスプレイのオートローテーションのテーマの中で取り上げられたのには、理由がある。2004年8月13日、普天間基地への着陸態勢に入っていた海兵隊のCH53D 大型輸送ヘリが基地に隣接する沖縄国際大学のキャンパスに墜落した。事故のあと、普天間基地を継続して利用するために、「普天間基地場周経路の安全性」という報告が日米合同委員会で合意さ れた。安全性の根拠は、オートローテーション機能を使えば、場周経路を飛ぶヘリは、安全に普天間基地のフェンスの中に戻れる、というものだ。

オスプレイが「オートローテーションにより場周経路から安全に基地内に帰還できる」のかどうかは、2007年の報告書合意以降の日米政府の「安全宣言」の信ぴょう性に係ってくる。だが、出来 ないものは出来ない。
普天間基地の場周経路にかかわる日米両政府の公式見解は、「日米合同委員会合意及び議事録骨子 日本国における新たな航空機(MV−22) 平成24年9月19日」で語られている。

(オートローテーション)  日本側から,MV−22が,既存の場周経路からオートローテーションによって安全に普天間飛行場へ帰還する能力を有することの確認を求めたところ,米国側 からは,両エンジンの故障という,オートローテーションが必要となる極めて想定し難い事態において,パイロットは飛行場内に安全に帰還するためのあらゆる措置をとる旨の回答があった。

この2012年9月の公式見解では、日本側も、「オスプレイが既存の場周経路からオートローテーションによって安全に普天間飛行場へ帰還する能力を有する」ことを前提に、その確認を米側に求め ている。今回暴露された同年7月26日の日米合同委員会の会議録(要旨)では、日本側が「オートローテーションまたは滑空のいずれの場合においても、安全に普天間飛行場内に着陸できるよう な場周経路を設定する必要がある旨」主張している。普天間基地の場周経路が、オスプレイのオートローテーションでは安全に降りられない設定になっていることを、日本側が認識していた 証拠だ。

米側はオスプレイのパイロットが「飛行場内に安全に帰還するためのあらゆる措置をとる」という答えにならない答えでお茶を濁し、現在まで普天間基地の場周経路に手を加えられた形跡はない。 日本政府もオートローテーション(実は滑空)で安全に基地内に降りられない、と認識している場周経路上を、オスプレイは飛び続けている。

(RIMPEACE編集部)

[参照資料]
普天間飛行場に係る場周経路の再検討及び更なる可能な安全対策についての検討に関する報告書(2007. 8.10)

日米合同委員会合意及び議事録骨子 日本国における新たな航空機(MV−22)(平成24年9月19日)


固定翼機の場周経路に入り、普天間基地にアプローチするオスプレイ。琉球大医学部の近くを飛行中


2016-5-31|HOME|