安部墜落オスプレイの事故報告書を読む(4)

事故機(DRAGON 06)の当日のミッションは、低空飛行訓練(奄美ルート)、夜間着陸訓練(中部訓練場、LZ FALCONなど)、夜間空中給油訓練(沖縄北東空域、シャーク・トレイル)を 組み合わせたものだった。フライト前に行われるリスク評価では、この3つの訓練は低リスクだった。その中で一番リスキーなのは奄美ルートを最低地上高度500フィートで飛ぶ 低空飛行訓練と判断されていた。
リスクは低い、と判断されていた夜間空中給油訓練で、墜落に至る重大な事故が起きた。

空中給油中に給油機から延びたホースの先端(ドローグ)が、給油を受けていたオスプレイのプロペラをヒットする事故は、今回の事故の前年、2015年にも起きていた(報告書本文 299-302)。
2015年の事故機(機体番号167917)は、ヘリ・モードに転換して垂直に着陸することに成功した(299)。
2015年の事故機は、ドローグが1枚のブレードにぶつかっただけで、他のブレードは表面に小さな傷がついただけだった(300)。

一方、今回の事故機(DRAGON 06)は、ヘリモードに転換しなかった。転換できなかったというべきだろう。
事故機が高度を1800フィートから1200フィートに下げた後、パイロットたちは「エアプレーン・モードのまま飛ぶと決めた。左右のプロペラによる出力の違いを、これ以上悪化 させたくなかったからだ」(235)

エアプレーン・モードなら、主翼が生み出す揚力が大きい。ヘリモードの場合、滑空による揚力以外はすべてプロペラの回転で生み出さなければならない。プロペラに負荷がかかれば かかるほど、左右の出力のアンバランスは拡大される、ということだろう。
オスプレイは主翼の両端にプロペラがついている。左右の出力のアンバランスがトルクに最大限に反映され、方向舵によるトルクの修正が効かなくなれば「破局」を迎える。
空中給油中にドローグがプロペラにぶつかるなどしてブレードが大きく破損すれば、オスプレイは通常の着陸ができなくなり、滑空で滑走路のある基地や空港にたどり着けなければ 落ちるしかない。

オスプレイの空中給油のすぐ隣には、墜落を引き起こす「魔の手」が迫っている。オスプレイの受油口の後方すぐ横で回っているプロペラに、ほんのわずかなパイロットの操作ミスで ドローグがぶつかってしまう。それが実際に起きたのが今回だけではなく、2015年にもあった。
プロペラへの衝突事故を招きやすい機体の構造であること、これが今回の墜落事故の誘因であり、事故原因をパイロットミスだけで片付ければ、また同じような事故が繰り返される ことになる。(続く)

(RIMPEACE編集部 頼 和太郎)


空中給油中のオスプレイ。給油ホースとオスプレイのプロペラが接近している(海兵隊のホームページより)


2017-11-3|HOME|