再度問う、オスプレイの危険性−6

鳥なき里の蝙蝠

2014年4月、民間用ティルトローター機AW609を開発しているアグスタウェストランド社から、「AW609、オートローテーション試験完了」という記事がリリースされた。

『フィンメッカニカグループであるアグスタウェストランドは、AW609チルトロータープログラムのオートローテーション試験を無事完了させたと発表しました。3月末から4月初めにかけて、 アメリカ・テキサス州のアーリントンにある施設より、エンジンパワーオフの状態で飛行機モードからヘリコプターモード(固定翼モードから回転翼モード)にするテストを、飛行時間10時間の うち70回行いました。FAAの支援のもと行われたこの試験は、完全なウィンドミリングおよびオートローテーションエンベロープを達成し、AW609のプログラム開発に向け重要な功績となりました。 』(2014.4.24 アグスタウェストランド社のウェブサイトより)

FAA(アメリカ連邦航空局)が見ている中で行われたこのオートローテーションの試験飛行は、AW609が耐空証明をとって、本格製造を開始する時期が近いことをうかがわせる。

AW609やオスプレイのようなティルトローター機は、米国の新基準の「パワード・リフト機」というカテゴリーでくくられる。このカテゴリーに課せられるオートローテーション能力がどんな ものかは不明だが、少なくともエンジン停止後にヘリモードに安全に転換出きることが求められていることは、AW609の70回の実機試験から言える。

オスプレイの実機によるオートローテーションについて一つだけ実施の報告がある。タイム誌に紹介された国防分析研究所(ペンタゴン内のシンクタンク)の2003年内部報告書だ。「1回だけ 試みたV−22のオートローテーションは惨めにも失敗した」「テストデータでは航空機は致命的なスピードで下降し、地上に激突しただろうことを示している」

開発段階で一回だけの実機テストが失敗しているのに、その後、「シミュレーターではオートローテーションができる。だからオスプレイはオートローテーションができる」と言い続ける人たち は、空想の世界に住める人たちなんだろう。

オスプレイは固定翼モードと回転翼モードの変換時が危険なことは、2012年4月のモロッコでの墜落死亡事故でも示された。あの事故の時、ローターは回りパワーがかかっていた。それでも バランスを崩して墜落したオスプレイは、もしパワーがかかっていない状態(エンジン停止の状態)で重心の移動を伴う回転翼モードへの移行を行えば、どんなことになるのか?
  姿勢制御ができずに「致命的なスピードで下降し、地上に激突」という結果になるのではないか?

普天間基地にオスプレイが配備される直前、米国でシミュレーターによるオスプレイのオートローテーション訓練を視察してきた防衛省・自衛隊は、2012年9月19日付けの「MV−22オス プレイ オートローテーションについて」(防衛省)の中で「オートローテーション開始」として

○ 両エンジン停止後、垂直離着陸モードへの移行操作を直ちに開始
○ エンジン停止後約2秒でナセル角度後方一杯(96度)へ移行完了

と説明している。この操作が(シミュレーターではプログラム通りに完了しても)極めて重大かつ危険なものだから、AW609のチームは飛行中に70回も繰り返して実際にできることを証明し たのではないか?

AW609の試験飛行結果を見れば、ティルトローター機はみんながみんなオートローテーションができない、ということでもなさそうだ。やはりオスプレイの要求性能が無理だったのだ。200 キロ近いおデブがパラシュート降下をするには、一人用の落下傘では安全ではないのと同じことだ。

今後、AW609をはじめとしてティルトローター機が民間機として飛行を始めたら、オスプレイが何を犠牲にして軍事上の要求を優先させたかが、目に見える形で明らかになってくるだろう。
ティルトローター機は俺だけだ、だから少々のことには目をつぶれ、救難活動にも役に立つから、と言って幅を利かせるオスプレイは、いわば「鳥なき里の蝙蝠」だ。

実態の伴わないシミュレーターの中だけでオスプレイのオートローテーション機能を「確認」し、普天間への配備のお先棒を担いだ防衛省は、今度は陸上自衛隊へのオスプレイの導入を決めた。

(RIMPEACE編集部)


オートローテーション試験飛行中のAW609 (アグスタウェストランド社のページより)


2014-11-30|HOME|