琉球新報ニュース 更新 2002年8月2日 金 14:43


米軍ヘリが漁船を威嚇/久米島北沖


 久米島北方の鳥島射爆場から約10キロ離れた米軍提供水域外のパヤオ(浮き漁礁)で7月末、操業中の漁船に米海軍のヘリコプターが低空飛行して接近、操業を中止させていたことが2日、分かった。米軍ヘリは漁船のすぐ近くまで接近し、乗員が手で合図するなどして操業をやめさせた。

 那覇防衛施設局の照会に対し、米海軍は提供施設外であったことを認識していたが、「安全を確保するため無線で連絡を試みたが、通じなかったため、接近して合図をした」と説明した。

 事態を重くみた県漁連(山川義昭会長)は2日午前、那覇市の水産会館で漁業制限等対策委員会を招集した。委員らは「漁船が転覆する可能性も高く、人命に関わる重大な事態だ」と一様に強い怒りを示し、久米島町の高里久三町長を団長とする抗議・要請団に漁業関係団体も加わることを全会一致で決定した。町漁協関係者によると、ヘリは海面に水しぶきが上がるほど低空で飛行し、漁船を「威嚇」したという。

 那覇防衛施設局、県、県漁協などに入った連絡によると、7月22、24の両日、久米島沖の米軍提供水域外で操業していた漁船に海軍のヘリが接近し、操業を中止させた。町漁協から24日、抗議を受けた那覇防衛施設局が25日、米軍側に事実関係を照会し再発防止を求めたが、漁協によると25、29、30日に同様の妨害が発生したという。

「手が届きそうだった」/漁民“操業妨害だ”

 「手が届きそうなほどの距離だった。危険だ」「安心して操業できない。操業妨害だ」。久米島沖で、米軍ヘリが操業中の久米島漁協所属の漁船を威嚇した問題で、関係者は不安と怒りの声を上げた。

 高里久三久米島町長は「米軍ヘリが近づいた時は、風が相当あり、波しぶきが上がったと聞いている。万が一誤って漁民が海に落ちたら、命にかかわる危険な行為だ。なぜ、公海でこういうことが起きるのか。絶対にあってはいけないことだ。鳥島の劣化ウラン弾の不安も残る中、安心して操業ができないと、ますます町民の不安と不満が募る」と強い口調で憤った。

 漁協関係者によると、最初に威嚇があったのは22日。「24日に漁民から報告があり、その日のうちに、危険だからやめてほしいと口頭で施設局に抗議した」が、24、25、29、30日と、威嚇が続いた。二機が同時に近づくこともあったという。

 「ヘリが真上に来て、手が届きそうなほどだったという。音も風もすごくて、漁民は漁を中止して港に戻った。小さな漁船はかなり揺れて危険だ。操業妨害であり、命と生活にかかわる問題だ。安全な配慮をするべきだ」と漁協関係者は訴えた。

 漁協職員の1人は「いつも漁をしている所で、大きなヘリがバタバタしてきたと、漁民は驚き、慌てふためいていた。自分勝手な振るまいで、これでは復帰前と変わらないと怒っている。実弾が訓練区域を飛び出すほどの、激しい演習があるということだろう」とあきれた様子で話した。