シリーズ・沖縄の基地を視る(41)

辺野古V字型滑走路案でも危険回避は出来ない


防衛庁と名護市が2006年4月7日に交わした基本合意書・別図

未だ計画段階の基地、そして絶対に造らせてはならない基地の話だ。
地元の名護市長と防衛庁長官は「普天間飛行場代替施設の建設に当たっては、名護市の要求する辺野古地区、豊原地区及び阿部地区の上空の飛行ルートを回避する方向で対応することに合意した」(基本合意書第一項)
この項目についている「別図」が上掲の図だ。進入針路と出発針路を分けることで、一見、集落の上空の飛行ルートが回避されているように見える。

集落上空の飛行の回避を目標に造られた案だから、逆風の時は離陸用と着陸用の滑走路を交代して飛ばすこと、またタッチアンドゴーは行わない(行えば"ゴー”の時に集落上空を飛行する)ことだろうと筆者は受けとめた。
それでも問題点はゾロゾロ出てくる。
航空機は着陸しようと思っても、必ず着陸出来るとは限らない。滑走路上の障害物や天候の急変などで着陸をやり直すことが発生するし、またそれを前提に飛行場管制は行われている。
軍用飛行場に必ず設置されるGCA(地上からの音声誘導による着陸システム)を利用して着陸するのは、霧がかかったりして有視界飛行が許可されない状況の時が多い。このとき地上管制官は最終誘導段階で "IF RUNWAY NOT INSIGHT, EXECUTE MISSED APPROACH"(滑走路を視認できなければ進入復行してください)と指示する(管制方式基準、航空局)
実際に見えなければ、進入方向を保ったまま高度を上げて管制官の指示を待つのだが、このとおりにすれば「名護市が要求する辺野古地区、豊原地区及び阿部地区の上空」を通過することになる。
意識的にかどうかは不明だが、基本合意書の図にはGCA経路がかかれていない。防衛庁は直ちにGCA経路をどのように考えているかを明らかにすべきだ。特に進入復行の経路はこの基本合意書の内容の担保にかかわる問題だから、放置は許されない。

また、図には赤い線で場周経路がかかれている。有視界飛行における飛行経路と示されているが、ヘリはこの経路をぐるぐる回るだけではない。キャンプハンセンやキャンプシュワブ、さらに北部の演習場で訓練を繰り返す。この演習場への行き帰りに、どんな経路をたどってこの場周経路に入ってくるかが大問題だ。
普天間基地のヘリの動きを見ていれば、図の風向きの場合、松田、久志、豊原、辺野古の上空で、また逆風の場合は阿部、嘉陽の上空でひねって着陸するコースが目に浮かぶ。ヘリの離発着は固定翼機よりもはるかに多いと思われる。その飛行コースがアイマイなままでは、「上空の飛行ルートを回避する方向」とは違う方向に米軍機が飛ぶことになりかねない。

飛行場は滑走路だけあれば機能するものではない。着陸誘導灯も「保安装置」として是非ものだ。
今回のV字型滑走路案では、少なくとも2ヵ所、陸側滑走路の延長線上で辺野古沖と、海側滑走路の延長線上で大浦湾入り口に、着陸誘導灯がズラッと並ぶことになる。新基地建設による海の破壊は、埋め立て部分だけではない。

今回の「基本合意」の根幹であるV字型滑走路によって、名護市の要求のうち飛行コースについては解決されたと見るのは大間違いだ。基本合意は内部に矛盾を含むし、米軍の軍用機運用は住民への配慮よりも軍隊の機能の維持・強化を優先するからだ。

(RIMPEACE編集部)


筆者が考える、GCAによる進入復行コースと、着陸誘導灯の設置場所


着陸誘導灯の上を飛行して普天間基地に着陸する海兵隊輸送連絡機(06.3.15 撮影)


'2006-4-16|HOME|