シリーズ・沖縄の基地を視る(30)

岩国の海兵隊ホーネットが多い嘉手納基地


3機編隊で沖縄周辺空域に訓練に向かう、岩国所属のFA18Dホーネット(05.11.14 撮影)


訓練から帰投したホーネットが、嘉手納基地上空でブレイクする(11.18 撮影)

「中間報告」の「空母艦載機の厚木飛行場から岩国飛行場への移駐」の項目の中に、以下の記述がある。
「すべての米海軍及び米海兵隊航空機の十分な即応性の水準の維持を確保するための訓練空域の調整」

厚木から岩国に艦載機約60機が移った場合、岩国基地から米軍訓練空域に向かう機数は倍以上になる。
海兵隊のホーネットなどの訓練空域は、四国沖のリマ空域、日本海側のR134、そして益田から浜田の上空にひろがる567空域だ。この3つの空域を使った海兵隊ホーネットの訓練は、年間飛行機数の3分の2を超える。

これだけ利用が集中した空域に、今度は海兵隊機の機数以上の艦載機が割り込んでくる。当然、この空域からはじかれる機体が出てくる。新たな米軍訓練空域を岩国基地の近くに設定することは、今でさえ民間航空路が錯綜する中できわめて難しい。そのとき「十分な即応性の水準の維持を確保するための訓練空域の調整」とは、何を意味するだろうか。

一つは、厚木から飛んでいた大島沖のR116空域の継続使用、もう一つが嘉手納をベースにする沖縄周辺訓練空域の利用だろう。
岩国から大島沖まで訓練に通うのは、厚木をまた利用しない限り訓練時間が短くなり、現実的ではない。だからこそ、厚木の艦載機は岩国に移っても厚木を基地として利用しつづける危険性があるのだが、この件については別稿で触れよう。
残る可能性は嘉手納への長期移動と沖縄周辺空域での海兵隊や艦載機の訓練実施だ。実は今でも岩国から1週間単位で嘉手納に飛来して実弾訓練などを行う海兵隊機が多い。ここに掲げた写真は氷山の一角だ。

「十分な即応性の水準の維持を確保するための訓練空域の調整」という理由で、嘉手納基地の飛行実態がかえって増えることさえありうる。「訓練空域の調整」という中間報告の記述には、そんな危険性が隠されている。

(RIMPEACE編集部)


海兵隊機のための駐機場には、岩国から飛来したFA18が並ぶ。何日か滞在してその後岩国に戻る(05.11.18 撮影)


2005-12-1|HOME