浦添移設構想について

浦添軍港計画案が明かに



 長年の懸案になっている那覇軍港の浦添地先移転に関し、米国が日本政府に提案した港湾構造や施設図が明かになった。琉球新報が2月19日紙面で報じたもので、建設が進められた場合、関連する資料からキャンプキンザー(牧港補給所)と一体となった一大補給・輸送センターを構想しているものと思われる。
 以下、日本政府に提案された軍港構造の問題点を整理してみた。


「99年2月19日付け琉球新報1面より」


− 総合港湾輸送設備を構想 −

 この構想は、94年と96年に提案されているが、2つの構想に共通しているものは「高速、大量、多品目」の貨物輸送を想定し、西太平洋における補給と輸送のキー・ステーション建設を念頭に置いているものと思われる。
 94年案(突起型桟橋)はその端的なもので、世界の海運・港湾輸送の主流になっているRO−RO船(車両貨物輸送船)やコンテナ船、バラ積貨物船用の桟橋を備え、更にラッシュ船用の「ライター」と呼ばれる特種なハシケの係留水域が予定してある。
 94年案にはこのほかホバー型揚陸艇(LCAC)や汎用揚陸艇(LCU)の運用も想定したランプ(傾斜路)のほか揚陸艦やRO−RO船に戦闘車両などを積み込むことを想定したランプが計画されている。
 地上設備では事前集積船隊司令部ほか、コンテナや車両置き場、一般雑貨集積所を備え、陸岸には燃料補給所や倉庫といった施設が並び、キャンプ・キンザーと一体化した補給・輸送の一大センターであることがわかる。96年案もこの構想を基本的には引き継ぎながら、コンテナ船の運用をより重視した提案になっている。
 90年湾岸戦争のときの輸送形態を見ると、兵員は約95%が航空機で空から、物資は約90%が貨物船で海から運ばれていたが、米軍が進めている高速・大量・多品目輸送に対応する港湾施設(キー・ステーション)を、閉鎖されたグアム基地の代わりに西太平洋に浮かぶ沖縄に求めていることは明かだ。
 近代的な港湾設備を備えていない那覇軍港の能力から比較すると、飛躍的というよりまったく異質の構想といえる。


− 事前集積・海兵隊・補給拠点を一体化 −


 この構想に特徴的なのは、大型の貨物輸送・荷役設備と併せて小型船用の係留水域やランプ(傾斜路)を備えているところだ。通常の民間港湾であれば、航路や作業の安全確保のため小型船と本船の係留・作業場所は区別してある。港湾の構造としては軍民共用は想定されない。海兵隊岩国基地の滑走路沖合い移設とセットで水深15メートルの岸壁が計画されているが、岩国−佐世保−沖縄と一体になった軍港として構想されているようだ。


− 環境破壊につながる構想 −


 更に問題なのは浦添地先に建設する際の環境破壊である。
 水深を確保するため珊瑚礁を大規模掘削し、この構想図には出ていないが港湾設備を守るため沖合い1キロに防波堤を建設するため埋立が必要になってくる。掘削と埋め立てにより周辺の環境は致命的なダメージを受けることになるだろう。


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