続・オスプレイ普天間配備の危険性 その9

オートローテーション、シミュレータの無理筋(1)



これがシミュレータで「無事に」降りてきたオスプレイの初期データ

9月19日に日本政府がオスプレイの「安全宣言」を行い、「我が国におけるMV−22オスプレイの飛行運用を開始させること」とした。この「安全宣言」は、2つの事故の原因を深く追求せず に、ただ「10月オスプレイ沖縄配備」という米軍のスケジュールに合わせるだけのものだ。
この19日の「安全宣言」には、2つの文書が付随していた。オスプレイのオートローテーション機能はあるのだ、と主張する文書と、オスプレイの事故率についての防衛省の主張を収めた文書だ。
事故率については、母集団内の順位をもって集団外の評価にしている、という以前からの批判がそのまま当てはまる内容だ。CV22の事故をMV22の事故率と切り離す理由も噴飯ものだ。それ らについては別に述べることにして、オスプレイのオートローテーション機能について、その無理筋振りを暴いていこう。

シミュレータによるオートローテーション訓練視察結果、というページにどんな初期設定で降りてきたか(もちろんシミュレータの中で)がデータで出ていた。ナセル角87度、飛行高度2000 フィート、飛行速度120ノットとなっている。
なぜか転換モードとなっているが、発行平成24年6月となっている防衛省のパンフレット「MV−22オスプレイ −米海兵隊の最新鋭の航空機−」ではオスプレイの転換モードはナセル角1度 から84度となっている。シミュレータの初期値87度は、防衛省の基準で垂直離着陸モードだ。
それにしても「安全宣言」と同時に出すとは?!

「安全宣言」の(3)運用に係る安全性 では日米合同委員会の合意事項の一つとして、「垂直離着陸モードや転換モードでの飛行について、運用上必要となる場合を除き、垂直離着陸モードでの 飛行を米軍の施設・区域内に限り、転換モードの時間を可能な限り短くすること」とある。
この「運用に係る安全性」にのっとれば、離着陸モードで飛ぶのは米軍の施設・区域内に限るから、120ノットですっ飛んでくるオスプレイはどこかの施設・区域の上にいるのだろう。普天間の 上空2000フィートを通過するつもりだったとしたら、普天間基地の外から離着陸モードで、しかも120ノットという同モードの最高速に近いスピードで飛んでいることになる。これこそ「運用 に係る安全性」に反することになる。

防衛省がシミュレータで確認した、と称するオートローテーションは、少なくとも普天間基地周辺のオスプレイ飛行時の条件とは全く違うものだ。つまり普天間基地周辺でオスプレイがオートロー テーションで安全に降りられるか、という問いに対して見当はずれな「答え」を出しているだけだ。 別の言い方をすれば、合同委員会の合意事項の一つが、オスプレイのオートローテーション機能ありという前提と相いれないのだ。(続く)

(RIMPEACE編集部) 


平成24年6月発行となっている防衛省のパンフレット「MV−22オスプレイ −米海兵隊の最新鋭の航空機−」の2ページ


2012-9-20|HOME|