続・オスプレイ普天間配備の危険性 その10

オートローテーション、シミュレータの無理筋(2)



「オートローテーション機能があることが確認された」(防衛省)ときのシミュレーターの初期データ(再掲)

前稿「無理筋(1)」で見たように、原則として離着陸モードは基地の境界の中だけ、という日米合意からは、普天間基地周辺でありえない飛行状態が、オートローテーションの初期条件として インプットされていた。では、この境界内という条件が無ければ、このオートローテーションの初期条件は現実的なのだろうか。米本国では、こんな条件で飛ぶことがあるのだろうか?

ナセルを垂直離着陸モードの87度に設定して、120ノットのスピードで飛行するオスプレイがいるのかどうか、海兵隊の作成した「オスプレイ普天間配備のための環境レビュー」(以下、 レビューと略)に記載されている、パターンごとのオスプレイの飛行中のデータを参照してみよう。
普天間基地、伊江島飛行場、中部・北部訓練区域のそれぞれにオスプレイのアプローチ、ディパーチャー、タッチアンドゴーなどの飛行時のデータが細かく出ている。飛行速度とナセルの傾きの 2つのデータに注目する。

ナセルの角度が80度以上のときには、どんなコース・パターンを飛んでいようが、速度は80ノット以下だ。ナセル87度のときの速度120ノットというのがどんなパターンの時よりも5割 以上速いベラボーな数値だということが、よくわかる。
日本だから、沖縄だから、という言い訳を封じるために、米西海岸の海兵隊航空基地にオスプレイを配備する前に行った環境アセスから、米国でのオスプレイの飛び方も見ておこう。
こちらは4つの基地のそれぞれの飛行パターンについてのオスプレイのデータが詳しく出ている。これもナセルの角度が80度以上のときには軒並み速度は80ノット以下だった。唯一の例外が ミラマー基地内で約500フィートの高さでのホバリングののちに1000フィートの高度で小さな周回経路を飛び、ホバリングに移る、という特殊なパターンだった。このケースでもスピード は100ノット以下だ。
場所を問わず、ナセルの角度が80度以上では、速度が原則80ノット以下というのがオスプレイの飛行だ。

ナセルの角度と高度の関係を見れば、シミュレータのオートローテーションの初期設定がいかに現実離れしているかは、もっとはっきりする。自衛隊のパイロットが経験したシミュレーターでの オートローテーションの初期設定では、ナセル角は87度、高度は2000フィートだったという。オスプレイは高度2000フィートで垂直離着陸モードにするのかねえ?
レビューに載っているパターンで着陸コースに入りナセルを80度以上に向けた時に、その飛行高度は500フィート以下だ。出発コースの場合は、もっと低い位置で80度未満になる。

オスプレイの「売り」は、早めに固定翼機モードに移行してスピードと高度をかせぐことだ。2000フィートの高度で、垂直離着陸モードでウロウロしている設定自体が、オスプレイの特徴と 反するものだし、現実にありえないような設定だ。
オートローテーションで何とか降りてこられるようなスピード・高度・そしてナセル角度を設定してみたけれど、現実の飛行高度やスピードとかけ離れてしまった。でも国民をあざむくために 現実との乖離に目をつむって「これならオートローテーションで降りられる。機能があることが確認された」と言い続けるのだろう。
次稿で、その致命的な問題点を指摘しよう。

(RIMPEACE編集部) 


普天間基地でオスプレイがタッチアンドゴーを行うときのルートと、高度・速度・ナセルの角度など。
赤のアンダーラインを引いた部分がナセルの角度が80度になった時の飛行データを示している。


2012-9-22|HOME|