続・オスプレイ普天間配備の危険性 その11

これはオートローテーションではない  シミュレータの無理筋(3)



着地時点で時速130Km. 他のヘリなら速度はゼロ

自衛隊パイロットが体験したシミュレータによるオートローテーションでは、着地したときの水平方向のスピードが時速約130Km。普通、ヘリがオートローテーションで降りてきたときは、 水平方向のスピードはゼロに近くなっている。フレア操作で、前方に進むエネルギーを落下速度を減らす方向に作用させるからだ。
オートローテーションで着地するときの速度が時速130キロメートル、とするとどんなことが起きるのか? たとえばオスプレイが普天間基地近くの小学校の校庭にオートローテーションで降り たとしよう。防衛省のいうようなオートローテーションだとすると、着地した後2,3度バウンドしながら130キロのスピードで20トン前後の機体が校舎に突っ込んでいく。

着地の時のスピードが他のヘリのようにゼロだったら起こりえないような大事故が、防衛省が機能の存在を確認したというオスプレイのオートローテーションでは、街中の空き地に降りれば必ず起 きる。
防衛省が確認したというオートローテーション機能とは、固定翼モードで行う滑空を、ナセルを上げたまま行うだけのことだったのだ。

滑空で着陸するには、失速しないだけのスピードが必要だ。フレア操作で落下スピードを相殺するのに必要なスピード+滑空時の失速速度+αを滑空開始時に確保するために、初期スピードを 120ノット(時速222キロメートル)にしなければいけなかった。
そして落下しながら、滑走路に正対するまで機首の向きを変える時間をかせぐためには、初期の高度を2000フィートに設定せざるをえなかった。
本来のオートローテーションの振りをするためには、ナセルの角度を60度以上にしなければならなかった。そして96度までもっていく時間をなるべく少なくするためには、ナセルは87度に しておかなければならなかった。
シミュレータによるオートローテーションなるものを開始するときの、誰が見ても不自然な初期データは、オートローテーションの振りをしながら滑空して失速しないようにするための必要条件 だったのだ。

通常の飛行パターンでオスプレイが飛んでいるときのデータ、例えばオーバーヘッド・アプローチでナセルを60度にしたときのスピード80ノット、高度500フィートという状態では、 自衛隊パイロットが体験したシミュレータによるオートローテーションの手順では滑空での滑走路への着陸ができず、地面(基地周辺の民家など)に激突するしかないことを、初期設定値が語って いる。


オスプレイのオートローテーション機能と普天間基地場周経路の安全性に係る日米代表のやりとり(9.19日米合同委)

オスプレイのオートローテーション機能がこの程度のものだとすると、しつこく安全性の確認を迫る日本側代表(外務省北米局長)に対する米側の答えが、体よく否認しているわけがよくわかる。

ところで、国会答弁がウソかどうかに係ってくるのだが、外務大臣や防衛大臣が「米軍はシミュレータでオートローテーションの訓練を繰り返し行っている」と答弁している。米軍が繰り返し行っ ているシミュレータの訓練は、自衛隊員が訪米して体験したものと同じものなのだろうか? もし同じものだったら、普天間に展開する海兵隊のパイロットは、沖縄での飛行中に起きるかもしれな いオートローテーションの訓練で、実態とはまったくかけ離れた、沖縄では「役に立たない」訓練を繰り返していることになる。

(RIMPEACE編集部) 


2007年の日米合意に基づく「普天間飛行場の危険性の除去に向けた取り組み」に収録されている説明図。
オスプレイなら滑走路に横向きにオートローテーションで着陸できない(防衛省の説明より)。
この説明図があてはまらなくなり、オスプレイでは場周経路飛行が安全ではないことになる。


2012-9-23|HOME|