米軍再編の中で相模補給廠に作られる

戦闘指揮訓練センターのアウトライン−3


太平洋陸軍の責任エリアの地図に重ねられた、戦闘指揮訓練センターの分布

米太平洋陸軍の責任エリアの中に、戦闘指揮訓練センターがどのように配置されているかを示したのが、上掲のスライドだ。米太平洋 陸軍のシミュレーション部隊の構築キャンペーンのパワーポイント"Campaign Plan Oct07 - Sep08"の中の一コマだ。
センターが配置されるのはハワイ、アラスカ、韓国と日本だ。

大部隊が駐留するハワイ、アラスカ、韓国と比べて、日本に駐留する陸軍は、計画中の第1軍団前方司令部を加えても組織的には ずいぶん小さい。この小さな部隊に対して戦闘指揮訓練センターを一つ配置するのはなぜだろうか。

米国防大学の紀要(というのだろうか?),2007年第1四半期号に在日米軍司令官ライト中将と同司令部計画担当部長(J−5)のヘイグ 中佐の論文「日米同盟は米軍再編を支える」が掲載されている。
「再編実施のための日米のロードマップ」の紹介だが、ほんの少しだけ「ロードマップ」より詳しくかかれている。

2国間訓練と演習の項目で、「陸上自衛隊は中央即応集団司令部をキャンプ座間の第1軍団(司令部)と並置する。中央即応集団は陸自に 新設されるメジャーコマンドで、すべての特殊作戦部隊を監督し、自衛隊の海外での平和維持活動の準備を行う任務を持つ。中央即応集団 をキャンプ座間に配置することは、第1軍団との訓練の機会を増やし、連絡体制や相互運用能力を高めるだろう。」
このすぐ後に「さらに、米陸軍は相模補給廠に戦闘指揮訓練センターを建設する。この施設では、第1軍団と陸自の2国間訓練と即応体制 維持のための、最新のコンピューター・シミュレーションを行う。」

これまでの日米合同演習をコンピュータ・スクリーンを介して行うようなことが書いてあるが、果たして実態はどうだろうか。
ハブ・スポーク方式で展開されている戦闘指揮訓練センターでは、スポークとなる各地のセンターの指導者がハブに集まる(サガミの 訓練センターの指導者はハブ施設のあるハワイに行く)
ここで最新のハードウェアとソフトウェアの訓練を受けたあと、スポークのセンターに戻り、最新版をインストールして稼動する。
最新のソフトウェアとは、米陸軍が直面する戦闘をシミュレートするもので、米軍全体で共通のものをまずハブで訓練した後スポークに 展開する。日米合同訓練(日本の防衛がテーマになっているハズ)のシナリオや日本国内の戦闘場面が、米陸軍の全部隊に訓練ツール として配布されシミュレーションが行われるとはとても思えない。

米軍再編によって、米陸軍部隊は、ヨーロッパや韓国に張り付く配置から、全部隊が交代で戦場に向かえるように改編された。交代で 戦場に行く部隊の指揮官たちに最新の戦場体験を共有させるための訓練装置、というのが戦闘指揮訓練センターの本質であり、また ハイピッチで建設が進められている理由だろう。
陸軍兵士が少ない日本国内にこのような訓練センターを置き、陸自も使うことが前提になっているとしたら、相模補給廠に訓練 センターを設置する狙いは、米軍の戦争に陸上自衛隊を引き込むことではないか。
米太平洋陸軍のシミュレーション部隊キャンペーンのページには「次は何処が戦場か」「テロとの戦い」というフレーズがある。自衛隊が 世界中の何処の戦場にも(米軍と共同でなら)進出出来る「能力」を持つためのシミュレーションは、「単なる研修」とはまったく異なる ものだ。

(RIMPEACE編集部)


「次は何処が戦場か」「テロとの戦い」の文字とイラク侵攻経路が描かれたスライド


'2008-6-17|HOME|