昨年９月に相模補給廠から運び出されて、本牧埠頭からＡＰＬのコンテナ船で中東方面に向かった大量のコンテナはどこに行ったのだろう。６００個前後のコンテナは、陸軍用のベースキャンプセットだ。Force
Provider，別名 City-in-a-box とも呼ばれているもので、インフラもなにもないところに、１セットで５５０人の兵士分の｢快適な居住空間」を作る。１セットは約百個のコンテナに収められている。
１０月１８日付けの星条旗新聞に、イラクに派遣された兵士の生活水準についての記事が載っていた。陸軍についての言及の中で、米陸軍資材軍(Army
Materiel Command)の高官が次のように話している。「陸軍は、 Force Providerと呼ばれるベースキャンプセットを、全部で３５セット持っている。そして、そのうちの１７セットがイラクに送られている。残りはアフガニスタンとクウェートにある」
Force Provider のセットが全部、アフガン戦域とイラク戦域に出払っている。相模補給廠から昨年搬出されたセットも、どちらかの戦場に送られているのだ。
アフガンかイラクか、そのヒントは米陸軍参謀会議の会議録の中に出ている。陸軍参謀総長の主催で2002年９月２６日に行われたとみられる会議の中で、補給兵站担当の陸軍次官補が
Force Provider について報告している。
「陸軍省は０２年９月１６日に、１２セットのベースキャンプセットを、アフガン戦争(Operation Enduring Freedom)に投入する命令を出した。計画担当マネージャーが陸軍資材軍や米中央軍とともに、期限と輸送方法を検討している。６セットはミシシッピー州ガルフポートから、もう６セットは日本の相模から持っていくことになろう。この１２セットを含めて、３６セットのうちの３１セットが動員される。残りの５セットのうち４セットはまだ生産が完了していない。また最後の１セットは、フォートポークにある。ここは
Force Provider の訓練とテストのための施設だ」
２００２年９月１５日からの週で、相模補給廠の倉庫からForce Providerが運び出され、９月２３日ころから横浜本牧埠頭への輸送が始まった、という当時の金子ときおレポートと合致する動きだ。
相模補給廠から搬出されたセットの行き先はアフガニスタンで決まり、ともとれる発言だが、１００％そうだとは言いきれないものを感じる。一つは輸送ﾙｰﾄだ。横田から空輸するのならともかく、相模のセットは横浜から船で運ばれた。カラチで陸揚げしてからトラックでアフガニスタンに運ぶのは、長距離の補給路の安全性の確保ができるのだろうか。それともカラチから飛行機でアフガンの米軍基地に運ぶのだろうか。それなら最初から空輸するほうが時間や手間の節約になると考えるのは素人考えだろうか。
また、いくつかの情報を単純に加えていくと、９月以降に１２セットが全部アフガンに行ったとするとアフガン戦域のセット数が２０を超えることも、もう一つの留意点だ。
「米陸軍は、ウズベキスタンとアフガニスタンに加えて、２００２年１月にもキルギスタンのマナス航空基地に Force Provider
ユニットを配布し始めた」(ゲリラニュースネットワーク）
「陸軍資材軍は、ルクセンブルグと米本土の保管場所から、４５０個以上のコンテナを移動させた。Operation Enduring
Freedom の支援のためだ。アフガニスタンのベースキャンプは、 Force Provider ３セットで構成されている」（ＡＲＭＹ GREEN
BOOK 2002.10)
「カンダハール航空基地に駐留する部隊は、(２００２年）５月初めに Force Provider ５セットを注文した。クウェートやパキスタン経由で到着した。最初の点とが組みあがったのが６月１２日、最後の食堂が出来たのは７月２５日だった」（ＵＳ
ARMY Reserve, News Item)
ダブルカウントがあるのかもしれないし、移動式のモジュールだから、１度展開した後でイラク戦に備えて動かしたとも考えられる。しかし、船積みされた相模の６セットのうちのいくつかは、クウェートやイラクに行き先が変わっている可能性は捨てきれない。
もっとも、全セットが戦場に行っているのであり、そこに相模のヤツも含まれている、というところが最大の問題であることに変わりはない。そして、相模の６セットの行き先として一番可能性が高いのはアフガニスタンだ、ということは言えるだろう。
（ＲＩＭＰＥＡＣＥ編集部）
