軍事輸送ラベルが語る
ベースキャンプセットはポートヒューニーミで船積み


一つ一つのコンテナにはってある輸送ラベル。荷物の動きなどがわかる(4月14日撮影)

4月14日に、相模補給廠に入る直前のベースキャンプセット(フォースプロバイダー)のコンテナに近づいて、輸送ラベルを撮影した。
決まったフォームで書かれているこのラベルを読みこむことで、このコンテナがどこから運ばれて来たかなどの情報が得られる。
読み方のお手本は、グローバルセキュリティーのライブラリーのページFM 55-56 Appendix Aに載っている。なかなか、そのものズバリのお手本はないのだが、読み解く参考にはなる。

このコンテナのラベルで、青字の1は TRNSPORTATION CONTROLL NUMBER で、この輸送の起こりとなった部隊のコードも書かれている。青字2の最終荷受人と一致する場合が多いのだが、今回は1文字ずれている。
"W58HZ1" は国防総省の Unit Identify Code(UIC) では、マサチューセッツ州ナティックのSBCCOM(US Army Soldier System Biological and Chemical Command)で、フォースプロバイダー製作担当マネジャーも、このSBCCOMに所属している。
青字2の最終荷受人のUICは、SBCCOMのコードの最初のW(陸軍の部隊であることを示す)がとれて、あとに数字が一つついているが、同じSBCCOMの部隊を示すと思われる。おそらくフォースプロバイダーのセットは、所有者はSBCCOMで、保管を相模補給廠で行っている、ということではないか。

赤字の3番は"N69232"で、同じく国防総省のコード体系ではポートヒューニーミのNaval Construction Battalion Centerを示す。海軍の設営部隊の本丸で、いわゆるSea Bee の巣だ。今回の海上輸送の契約・管理を担当していると思われる。
グリーンポイントにベースキャンプセットを積みこんだ船積み港(POE)は、赤字4番に明記されているようにポートヒューニーミだ。揚陸港(POD)は赤字5番にコードUM1で示されている横浜港だ。
横浜市港湾局への届によれば、グリーンポイントは横浜の前にカナダに寄港しているから、ポートヒューニーミでフォースプロバイダーのセットを積みこんだあと、北上してカナダの港に入り、その後太平洋を横断して横浜・ノースドックに入ったと考えられる。
ちなみにポートヒューニーミを紹介するPort of Huenemeによれば、この港はロサンゼルスとサンフランシスコの間で水深の深い唯一の民間港だ。かんきつ類の輸出では全米一、自動車とバナナの輸入ではトップテンにランクされているとのことだ。
民間港といってもポートヒューニーミは海軍の街だから、港の写真には軍艦も写っている。

白字の6番は、この輸送ラベルが張りつけられていたコンテナ固有の情報で、USAU 009246-0 は、コンテナにかかれていた記番号そのものだ。その下にはコンテナの大きさが書かれていて、240インチ、96インチ、96インチだから、長さが20フィート、巾と高さが8フィートのコンテナということになる。

最後に赤字の7は、輸送の優先順位を示すコードだ。優先度が高いものから1,2,3となっていて、3は優先度が一番低いものだ。優先度は要求する部隊の任務の重大さと、輸送する物資の要求の高さのマトリックスで定められていて、通常の任務の場合はほとんどが優先度3にランクされる。
輸送の優先度が低いということと、運ぶ物資の重要性とは相関がない。輸送の優先度を決めるマトリックスの要素に物資の重要性が入っていないからだ。今回優先度3で運び込まれたフォースプロバイダーのセットが、中東戦域で必要になれば優先度1で運び出されるだろう。

フォースプロバイダーの製作部門が、米本国の西海岸の港から横浜港経由で相模補給廠にいくつかのセットを送ってきた。それは戦場へ向かう緊急の物ではなく、相模補給廠で備蓄されるために運ばれたものだ。軍事輸送ラベルから読み取れる情報を簡単にまとめれば、そう言えるだろう。

(RIMPEACE編集部)


(左)輸送ラベルはここに貼ってあった。(右)輸送を受託した業者が保険に入ったのだろうか。ロイズ・レジスターのラベルもあった。

2005-4-17|HOME