任務指揮訓練センターと陸上自衛隊−3
韓国戦闘シミュレーションセンター(KBSC)でのコンピュータ・シミュレーション・プログラムを管理・運用する支援業務は民間業者に委託される。公募される業者の仕事の一つに、シミュレーションを用いた訓練の前のテストと、プログラムを走らせるオペレータの教育がある。
業務委託契約のための業務記述書には、その対象となるシステム名が十数本挙げられていた。
一方、相模補給廠内に造られた任務指揮訓練センター(MCTC)を取材した星条旗新聞の記事「相模デポのMCTCで何を教えるか?」(2011.7.11)は、サガミのセンターで走る6本のシステムを例示している。
両者を比較したのが下図。
KBSC | SAGAMI MCTC |
Force XXI Battle Command Brigade and Below (FBCB2) | |
Blue Force Tracker (BFT) | Blue Force Tracker |
Maneuver Control Workstation (MCS) | |
Intel Fusion Workstation (formerly All Source Analysis System [ASAS]) | |
Joint Automated Deep Operations Coordination System (JADOCS) | |
Advanced Field Artillery Tactical Data System (AFATDS) | The Advanced Field Artillery Tactical Data System |
Air and Missile Defense Personal Computer System (AMDPCS) | |
Air Defense System Integration (ADSI) | |
Battle Command Sustainment Support System (BCS3) | The Battle Command Sustainment Support System |
Command and Control Personal Computer (C2PC) | |
Joint command and control systems (US Air Force, Navy and Marine Corps) as required | |
Global Command and Control System Army and Maritime (GCCS-A, GCCS-M) | |
CENTRIXS-K | |
Tactical Airspace Integration System (TAIS) | |
Command Post of the Future | |
The Distributed Common Ground System | |
The Tactical Ground Reporting System (TiGR) |
GPSを用いて戦場での装備や兵士の動きを追跡するブルー・フォース・トラッカーなど、KBSCとサガミのMCTCで共通のシステムも3本あるが、なぜか違ったシステムをサガミMCTCでは3本取り上げている。
「任務指揮訓練センターは06年に日米政府が合意した在日米軍再編の一環として、在日米陸軍司令部のあるキャンプ座間(相模原市、座間市)に移駐する米陸軍第1軍団司令部の要員訓練用として設置された」(2011.8.5 毎日新聞神奈川版)
ハブ組織である韓国戦闘シミュレーションセンターは、「コンストラクティブ・シミュレーションを統合して師団レベル以上のシミュレーション演習を行う」と業務記述書に書かれている。
前方司令部といえども軍団を指揮する組織の要員が受ける訓練は、ハブ組織の韓国戦闘シミュレーションセンターで行われる訓練と同等の師団以上のレベルのシミュレーション訓練でなければならない。サガミMCTCが座間の米陸軍第1軍団司令部の要員訓練用だったら、KBSCと同じシステムがあるはずなのに、なぜ2つの組織のシステムに差が生じているのだろうか。
スポーク組織のサガミMCTCは、旅団以下の指揮官たちのより戦場に密着したシミュレーションを行う組織として、ハブ組織と棲み分けている。スポーク組織のサガミMCTCが「第1軍団司令部の要員訓練用として設置された」という説明にムリがあるといえる。
なお、星条旗新聞で紹介された(米軍がリリースした)サガミのセンターで走る6本のシステムの多くには、「トモダチ作戦で使われたシステムだ」「被災地で利用できる」といった説明が添えられている。軍隊が災害救助の目的で動くときに大きな力を発揮することは確かだ。しかし、戦闘行動遂行のために造られたシミュレーション・システムを動かして、相模補給廠内の任務指揮訓練センターで戦闘のリハーサルが行われるということの重大性が、災害救助にも使えるということで軽減されるものではない。
(RIMPEACE編集部)
ブルーフォース・トラッカーの画面。友軍が青、敵対勢力が赤で表示される
(USAF Laughin Airforce Base のページより)
2011-8-11|HOME|