相模補給廠に作られる

任務指揮訓練センターと陸上自衛隊−4

「アフガンへの陸自派遣要求」
ウィキリークスが明らかにした2008年米外交公電情報をもとにした新聞記事(2011.6.17朝日)の見出しだ。
ブッシュ大統領が2008年夏の洞爺湖サミットで「アフガンへの陸自派遣」を福田首相に求めたことが、米外交公電に示されていた。

米高官から「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」と迫られて、小泉首相は2004年1月、陸自の先遣隊をイラクに出した。
ブッシュ大統領は4年後にアフガンに陸自の大部隊を派遣することを求めた。陸自をイラクやアフガンに派遣することを、少なくとも2004年以降、米国政府は継続して強く求めていた。

「再編実施のための日米のロードマップ」の中で「在日米陸軍司令部の改編に伴い、戦闘指揮訓練センターその他の支援施設が、米国の資金で相模総合補給廠内に建設される」と日米政府が合意したのが2006年5月だった。
陸自を中東の戦域に派遣させることに米国が執着している時期に、戦闘指揮訓練センターや訓練支援センターの相模原での建設方針が決まり、戦闘指揮訓練センターの工事が始まった。

第525偵察旅団第38騎兵連隊第1大隊がフォートブラッグの戦闘指揮訓練センターで、新しいVBS2を使って戦闘のリハーサルを行った。これは近く行われる戦場への出撃の準備のためだ。(Fort Bragg Soldiers usevideo game for combat simulation, ARMY News, June 10,2010)
テキサス州兵の第36歩兵師団は近く行われるイラクへのディプロイメントに備えて、フォートルイスの戦闘指揮訓練センターで任務リハーサル訓練を受けた。(National Guard のニュース,11/23/2010)

戦闘指揮訓練センター(任務指揮訓練センターと近頃改称)は米本土などにも造られている施設で、ローテーションでイラクやアフガンに派遣される米地上部隊が、派遣直前に訓練を行う。群集の中に潜む敵を殺害する交戦規則などを、コンピュータ・シミュレーションを用いてバーチャルな戦場の中で繰り返し叩き込まれる。

陸自がアフガンに派遣されれば必ず遭遇するシチュエーションを、派遣前にバーチャルに体験し、対応を訓練することなしでは、米軍の友軍として、時には米軍に替わる治安維持部隊として陸自が機能することは出来ない。

陸自の派遣に対する日本政府の同意取り付けという壁とともに、実戦経験のない陸自にいかに効率的に米軍並みの戦闘経験を積ませるか、が陸自の中東戦域派遣のもう一つの壁となっている。

この2つ目の壁を取り払う手段を提供するのが、「相模総合補給廠内に建設される戦闘指揮訓練センターその他の支援施設」だ。
8月4日の任務指揮訓練センター開所式で、米軍側が陸自の使用も匂わせているのに対し、陸幕教育訓練部長の陸将補が「使用は考えていない」と記者に答えているのが、現在の陸自のアフガン派遣に対する日本政府の方針を反映しているものだ。

米国のアフガン出口作戦の進行、軍事費削減の必要性などから、米国政府が今後も陸自のアフガン派遣を強く求めることに変化は無いだろう。
「国際貢献」の名の下に陸自を海外派遣することを日本政府が認めるように、ありとあらゆる手段を講じて米国が説得していることが、ウィキりークス資料から明らかになっている。
その説得と同時平行で派遣部隊のバーチャル訓練を行うことの出来る施設、それが任務指揮訓練センターだ。

(RIMPEACE編集部)


フォートフッドの戦闘指揮訓練センターでコンボイ・トレーニング中の兵士(ARMY.MIL NEWS 2010.7.6 より)


2011-8-11|HOME|