「在日米陸軍司令部の改編」はまやかしだ


防衛施設庁が在日米軍再編の中間報告の説明に、関連する自治体を回っている。その資料を入手した。「日米同盟:未来への変革・再編(役割・任務・能力と兵力態勢の再編) 平成17年10月 防衛庁」という40ページものだ。

第一軍団司令部がUExに改編され、キャンプ座間に移駐してくることが、どんな形で書かれているのかを確かめてみた。三部構成の3、兵力態勢の再編に出ていたのが上掲の2つのページだ。(赤線は筆者)

どこにも移駐と言う文字は出てこない。移動を表す矢印さえ無い。アンダーラインで示したように、「在日米陸軍司令部の改編」とあるだけだ。中間報告(仮訳)では、この部分は「キャンプ座間の在日米陸軍司令部の能力は、展開可能で統合任務が可能な作戦司令部組織に近代化される。」となっている。「UExを移駐することで」という手段が中間報告には書かれていない。沖縄にかかわる部分では、明確に「移転」と書かれているのに、なぜか陸軍司令部の移駐についてだけは具体的に触れられていない。

「在日米陸軍司令部の改編」という文字だけを見れば、当然、以下の疑問が浮かんでくる。
在日米陸軍司令部という組織がなくなって、戦闘部隊の司令部であるUExのもとに、日本に駐留する米陸軍の部隊が統合されるのだろうか。これは、現行の師団レベルの司令部をモジュラー化して、独立させるという米陸軍再編の考え方とは合致しないだろう。
もし、在日米陸軍司令部という名前で「展開可能な」作戦司令部組織になったら、どんなことが起きるのだろうか。仮にこの司令部が韓国に「展開」したら、在日米陸軍司令部が韓国で指揮をとるという、論理的に矛盾する形になる。

これらの矛盾は、第一軍団司令部を改編してキャンプ座間に移駐する、という米軍再編の中での動きを、単に司令部機構の内部的な改編だ、と言いくるめようとすることに起因する。
部隊移動を示す矢印を(わざと)中間報告の説明書に入れなかったり、再編にかかわるキャンプ座間の増員を「この人員増は、過去、キャンプ座間及び相模総合補給廠で実施された人員変動幅の範囲内である」という横浜防衛施設局長の地元への事前説明を見れば、防衛庁がキャンプ座間への新司令部の移駐を、米本国からの移駐ではなく、現行司令部の改編だ、と言いくるめたい気持ちがよくでている、としか言いようが無い 。
もちろん、そんなゴマカシが通用するはずもないが。

(相模原市議・金子ときお)


'2005-11-5|HOME|