米軍再編と沖縄の基地負担軽減に関する質問主意書と、その回答

沖縄選出の照屋議員が、米軍再編と沖縄の基地負担軽減に関する質問主意書を提出、回答が出た。
大変重要な文書であり、照屋議員の了解を得て、ここに掲載する。(金子ときお・相模原市議)

☆ 平成十六年十月二十一日提出  質問第二五号 米軍再編と沖縄の基地負担軽減に関する質問主意書
  提出者  照屋寛徳
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米軍再編と沖縄の基地負担軽減に関する質問主意書

 米国は、世界的規模での米軍再編を進めている。
 この米軍再編は、ブッシュ政権の下で米軍の「変革」(transformation)という言葉で表現されるように 、広範囲な意味で軍隊の変革を達成しようとする計画である、と言われている。
 ラムズフェルド米国防長官も、米軍変革に関する国防総省の指針の中で、「我々は現在の能力だけでなく、思考様式、判断方式、そして戦い方までも変革しなければならない」と述べている。
 米軍の再編計画が進む中で日米間において在日米軍の再編協議が行われ、日米双方が提示する具体的な案がマスコミ等でさまざま報ぜられている。私は、米軍再編が在日米軍基地の約七五%が集中する沖縄の基地負担を軽減する絶好のチャンスと捉え、政府が米国に対し主体的に発言し、積極的に要求すべきである、と考える。
 ところで、米軍再編と関連して、政府の中で「日米安保条約を再定義すべし」とか「いわゆる極東条項を見直すべきだ」との議論があるやにマスコミ等で報ぜられているが、在日米軍再編が日米同盟の強化や米軍と自衛隊の一体化につながることがあってはならない。
 よって以下、質問する。

一 政府は、米軍再編に伴う在日米軍再編問題について、どのような基本姿勢で日米間の協議に臨んでいるのか明らかにされたい。また、在日米軍問題についての最終合意の取りまとめはいつ頃までに行われる見通しなのか明らかにされたい。

二 在日米軍再編に関する日米協議の中で、米陸軍第一軍団司令部(ワシントン州)のキャンプ座間(神奈川県)への移転が米国政府から提案され、政府はかかる提案を拒否した、との複数のマスコミ報道があるが政府の見解を明らかにされたい。

三 米陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間への移転は、在日米軍の司令部機能を高めることになり、在日米軍等の戦略機能及び活動範囲を中東にまで拡大することになる。よって、米陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間への移転は、在日米軍の活動範囲を定めた日米安保条約第六条のいわゆる極東条項に違反すると考えるが政府の見解を明らかにされたい。

四 町村信孝外務大臣は、去る十月十六日、那覇市内における記者会見で、「新しい脅威にどう対応するか、幅広い視点で議論を始めている。頭から日米安保条約や極東条項ありきだと議論が狭くなる。頭を軟らかく、広い視野で大局的議論をして行くのが大切だ」との趣旨の発言をされ、在日米軍再編問題について日米安保条約が規定する「極東条項」にとらわれず、テロとの新しい脅威にどう対応するかとの観点から幅広く議論すべきとの認識を示した、と地元紙は報道している。(平成十六年十月十七日付琉球新報、沖縄タイムス)
 町村信孝外務大臣発言の真意と、政府は、日米安保条約第六条のいわゆる極東条項を変更することもやむなしとの方針なのか見解を明らかにされたい。

五 細田博之官房長官は、去る十月十六日、松江市内で記者会見し、在沖米軍の海外移転問題について、「日本政府は、沖縄以外の場所に移ってほしい、できれば海外移転を希望している」と述べた。その上で、「米側もかなり内部で検討しているものと承知している」との認識を示した、と報道されている。(平成十六年十月十七日讀賣新聞)
 細田官房長官の発言は、その場しのぎの発言とも思えるが、内閣の責任あるスポークスマンの発言として重く受け止めたい。
 また、小泉総理も去る十月七日、アジア欧州会議(ASEM)首脳会議出席のため訪問したベトナムで同行記者団に対し、「在沖米軍基地の国外移転はあってもいい」との趣旨を述べている。これらの小泉総理や細田官房長官の発言を総合すると、在沖米軍基地の海外移転が政府の方針と理解するが見解を示されたい。

六 小泉総理は、第一六一回臨時国会冒頭における所信表明で、「在日米軍の兵力の構成見直しについては、二十一世紀の国際情勢に適応した我が国の安全保障の確保と、沖縄等の地元の過重な負担の軽減を図る観点から、米国と協議を進めてまいります。」と述べている。
 小泉総理が右所信表明で述べられた「我が国の安全保障の確保と、沖縄等の地元の過重な負担の軽減を図る観点から」とおっしゃる「観点」とはいかなる方策なのか、具体的に明らかにされたい。

七 沖縄における基地負担の軽減を実現するには在沖米海兵隊のすべての海外移転が必要であり、政府の対米要求によってその実現は可能だと考えるが政府の見解を示されたい。

八 沖縄における基地負担の軽減を実現するには、緊急に現下の「危険の排除」が求められており、それは普天間飛行場の閉鎖と海外移設、普天間飛行場の辺野古移設の中止、キャンプ・ハンセンにおける都市型戦闘訓練施設の建設中止だと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。


平成十六年十月二十九日受領  答弁第二五号  内閣衆質一六一第二五号   平成十六年十月二十九日
内閣総理大臣 小泉純一郎         衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員照屋寛徳君提出米軍再編と沖縄の基地負担軽減に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
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衆議院議員照屋寛徳君提出米軍再編と沖縄の基地負担軽減に関する質問に対する答弁書

一について
 アメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)は、新たな安全保障環境における課題に対処するため、合衆国軍隊の全世界的な軍事態勢の見直し作業を行っており、我が国を含め、同盟国、友好国等と緊密に協議してきている。我が国に駐留する合衆国軍隊(以下「在日米軍」という。)の兵力構成の見直しに関する合衆国との協議においては、在日米軍が有している抑止力の維持とともに、在日米軍の施設及び区域が所在する地方公共団体の過重な負担の軽減が十分に念頭に置かれるべきであると考えており、このような観点から、合衆国政府との協議を進めていく考えである。
 在日米軍の兵力構成の見直しに関する日米間の協議においては、このような観点を踏まえ、日米それぞれの考え方に係る理解を深めるための意見交換を行っている。このような協議は、双方が互いに受入れ可能な在日米軍の兵力構成について合意することを目的として続けられる予定であり、今後の作業日程等について具体的に日米間で合意されたものがあるわけではない。

二から四までについて
 合衆国軍隊の陸軍第一軍団司令部の移転につき様々な報道がなされていることは承知している。在日米軍の兵力構成の見直しに関する日米間の協議の現状については、合衆国軍隊の軍事態勢の見直しについての基本的考え方、地域の情勢認識や日米の役割と任務といった基本的な論点について包括的な議論を行いつつ、日米それぞれの考え方に係る理解を深めるための意見交換を行っている段階であり、御指摘の町村外務大臣の発言は、そのような趣旨を説明したものである。日米間の協議の中で、種々の具体的な見直しのアイデアについても議論してきているが、提案のやりとりを行っているわけではない。いずれにせよ、個別の施設及び区域についていかなる決定も行われておらず、合衆国側との議論の内容についても、合衆国政府との関係もあり、申し上げることはできない。
 我が国の施設及び区域を使用して指揮統制を行う合衆国軍隊の司令部と日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号。以下「日米安保条約」という。)第六条との関係については、仮に一般論であったとしても、そのような司令部が具体的にどのような活動を行うかについては様々な可能性があり得るため、日米安保条約第六条との関係を一概に述べることはできない。いずれにせよ、今次の在日米軍の兵力構成の見直しが現行の日米安保条約及び関連取極の枠内で行われることは当然であり、日米安保条約第六条の見直しといったことは考えていない。

五から七までについて
 在日米軍の施設及び区域が所在する地方公共団体の負担については、政府としてこれを十分に認識している。在日米軍の兵力構成の見直しに関する合衆国との協議においては、在日米軍が有している抑止力の維持とともに、在日米軍の施設及び区域が所在する地方公共団体の過重な負担の軽減が十分に念頭に置かれるべきであると考えており、このような観点から、合衆国政府との協議を進めていく考えである。現在、沖縄の在日米軍の施設及び区域の沖縄以外の国内あるいは海外への移転等の可能性を含め、どのように沖縄の負担の軽減を実現するかについて、様々な可能性を検討しているところであるが、現時点で何ら決定はしていない。

八について
 沖縄県民の負担の軽減のため、政府としては、まずは「沖縄に関する特別行動委員会」の最終報告(以下「SACO最終報告」という。)の着実な実施が必要であり、これに最大限の努力を傾注するとの考えである。
 普天間飛行場の移設・返還については、SACO最終報告、平成十一年十二月二十八日に閣議決定した「普天間飛行場の移設に係る政府方針」(以下「閣議決定」という。)及び平成十四年七月二十九日に政府が策定した「普天間飛行場の代替施設の基本計画」(以下「基本計画」という。)を踏まえ、早期にこれを実現すべく、これまで合衆国側と緊密に協議してきているところである。政府としては、同飛行場が市街地にあることもあり、一日も早く周辺住民の方々の不安を解除したいと考えており、引き続き、SACO最終報告、閣議決定及び基本計画に従い、沖縄県等の地元地方公共団体と十分協議を行いながら、同飛行場の移設・返還の問題に全力で取り組んでいく考えである。
 在日米軍のキャンプ・ハンセンにおける複合射撃訓練場建設計画については、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号)上、合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を採ることができるので、合衆国が在日米軍の施設及び区域内に合衆国予算により必要な施設を建設することは、合衆国が有する施設及び区域の管理権の行使の一環として認められるものであると考えている。他方で、引き続き在日米軍に対しては、公共の安全や地元住民の懸念への配慮を求めていく考えである。

'2004-11-20|HOME|