新型弾道ミサイル観測艦、佐世保に寄港


米海軍佐世保基地立神第9号岸壁に接岸したインビンシブル (6月12日撮影)


 6月11日から米海軍佐世保基地に寄港していた米海軍の海洋測量艦が、開発中の弾道ミサイル追尾システムを装備していたことがわかった。
 この艦は米海軍所属の「インビンシブル」で、原潜の音紋を採取する音響測定艦として主に大西洋に配備されていたが、95年ごろ新型艦の配備に伴って退役していたと見られていた。
 しかし今月佐世保港に姿を現した同艦は、後部甲板に装備していた特徴的な電纜用リールをはずし、代わりに巨大な球状のレドームを背負っていた。
 米軍のホームページなどで調べたところ、このレドームは「COBRA GEMINI」という名称で、弾道ミサイル追尾システムであることが判明した。
 佐世保や横須賀などに入港を繰り返している弾道ミサイル観測船「オブザベーション・アイランド」が装備している「COBRA JUDY」がICBMを観測対象にしていることに対し、CGは300キロから1500キロの戦域ミサイルを対象としているようだ。
CGは昨年原型が完成し、今年になってテストベッドとなったMSC所
属のインビンシブルに搭載し実験が始められていた。日本には初めての寄港である。
戦域ミサイル防衛(TMD)構想と関係したテスト運用のため寄港したものと思われる。
これまでの実戦や研究から、弾道ミサイル追尾には戦闘艦に搭載している現在のイージスシステムでは無理だ、ということで、新しい追尾システムの研究が進められていた。

関連ページ: 全米科学者連合の「コブラジェミニ」解説ページ レドームの中のパラボラが良く分かる写真も載っている。

インビンシブル寄港と星条旗新聞記事について

驚かれたインビンシブルの寄港(99.7.2 星条旗新聞より)



米海軍佐世保基地立神第9号岸壁に接岸したインビンシブル (6月12日撮影)


海洋調査船の日本への展開に対し、日本の市議たちの米軍基地監視グループが注目している。インビンシブルは佐世保基地に入港したが、その理由について米軍は「通常の西太平洋への展開」と言っている。しかし監視グループのリムピースは、ミサイル防御システムのテストのために入港したと言っている。
海洋調査船に分類されるインビンシブルは、球型のレドームに覆われた「コブラ・ジェミニ」と呼ばれるレーダーを装備していて、このレーダーは弾道ミサイルの追跡に使われる、とリムピースは言っている。海軍公式筋は、レドームは中の装備を保護するものだと述べたが、その装備が何に使われるかについては話そうとしなかった。
軍事海上輸送軍(MSC)のスポークスマン(横浜)のダブ・アレンは、インビンシブル(所属はMSCとなる−訳注)は九州の港に6月11日に入港したと語った。しかし彼はその船の行動計画や、この地域にどのくらい留まるのかについては言及を避けた。
第7艦隊スポークスマンのグレグ・スミス中佐は、21人乗り組みのインビンシブルは、ハワイから佐世保にやって来た。日本に寄港した目的は「給油と乗組員の休養」だと述べた。
2隻目の観測艦オブザベーション・アイランド(やはりMSC所属−訳注)も大陸間弾道ミサイルを追跡するためのレドームを備えているが、最近太平洋にいる(6月28日横須賀入港−訳注)。
オブザベーション・アイランドの出現は、米軍が差し迫った北朝鮮のミサイル発射テストを追跡するためだ、という観測を呼んでいる。昨年北朝鮮は、3段ロケットによるミサイルを発射し、日本上空を通過させた。米政府は、北朝鮮は現在2回目の発射テストを準備しているようだ、と言っている。
アレンは、MSCの船は西太平洋の特定の港を母港にしてはいない、と語った。「MSCの船は全世界的な視点から展開している。これらの船は必要な場所で任務につく」インビンシブルは佐世保入港中に、いくつかのミサイル防御に関する実験を行う、とリムピースは言っている(そんなことは言っていない!−訳注)。しかし第7艦隊のスポークスマンは、インビンシブル
の行動についての確認を避けた。
米海軍の公式ウェブサイトである「海軍艦船登録簿」によれば、インビンシブルは95年に退役している。アレンによれば、インビンシブルはしばらく前に現役に戻され、再びMSCに所属している。


我々の見解など

まずRIMPEACEのインビンシブル寄港についての見方から。
私達の理解では、コブラ・ジェミニのインビンシブルへの搭載はまだ試験段階であって、実用段階には達していない。その試験を行う航海の途中に佐世保に寄港した。したがって、佐世保で何らかのテストをする可能性は否定はしないが、我々の知るかぎりではそこまで言及は出来ない。もちろん「北のミサイル実験」監視のために来たという見方にも、航海テスト中であることから同意出来ない。ちなみに、オブザベーション・アイランドにもコブラ・ジェミニ搭載の予定があるが、これも99年中に取り付ける予定だとか。
次に、この記事を読んだ感想は、米軍はここまで秘密にする必要があるのかな、ということだった。元潜水艦捜索船(T−AGOS)にコブラ・ジェミニを積んで走っている図も公開されているのに、「レドームは中身を保護するものだが、中身については言及出来ない」はないんじゃないのかナ。現在進行中の作戦については一切言及しないというのが米軍の立場なのだろうが、これでは星条旗紙の記者に「インビンシブルについてはRIMPEACEに聞け」と言っているのに等しいのではないか。もちろん我々は、米軍の代弁をするためにインビンシブルの寄港をとりあげたわけではない。以前から、あちこちで頻発するミサイル実験に対して、オブザベーション・アイランドが「鈍足に鞭打って」走り回っているのを見ていて、一体どうなっているのか他人事ながら気になっていた。
冷戦後の米軍の主要な任務の一つである「地域紛争への対処」の手段の一つとして、「ミサイル実験途上国」に対する「常時監視」の圧力をかけるためには、観測船の数を増やすのも一つのやりかただろう。今回のインビンシブルの佐世保寄港は、コブラ・ジェミニを積んだ小型船を何隻か展開するという方向に動きつつあることの現れと、我々は考えている。



オブザベーション・アイランドのコブラ・ジュディシステム。フェーズドアレイ・レーダーの上の
パラボラ・アンテナシステムがコブラ・ジェミニに置き換えられると見られる。


関連ページ:新型弾道 ミサイル観測艦、佐世保に寄港