「純子の見聞録」元気ネットワーク2000年12月


「ワークシェアリングにおける男女格差」

先日「長崎県中小企業活力ある職場づくり推進事業大会・国際労働シンポジウム」が行われました。日蘭交流400周年の記念事業の一環でもある訳ですが、オランダの労働法学者の特別講演「オランダモデルの成功とその要因」とシンポジウムが長崎市であり、それには参加出来ませんでしたが、第2日目の分科会「JIL(日本労働研究機構)フォーラム」、テーマ「拡大する非正規雇用」が佐世保市のハウステンボスで行われ、参加しました。

 完全失業率4・7%、景気は緩やかな回復傾向にあるといいつつも厳しい状況にあり、地方都市である佐世保市はさらに厳しい状況にあります。又景気刺激策の影響もあって佐世保市の財政も厳しい状況にあり、行財政改革の論議が議会では活発に行われています。しかし、その論議の中心は事業の取捨選択ではなく、官から民へ仕事を移し、民の柔軟性を強調しつつもただ単に安上がりな不安定労働者に置き換えられている傾向にあり、強い危機感を持っています。

 フォーラムでは、不安定労働者とは古い労働学者がよく使う言葉だとの指摘があり、本来の非正規雇用労働者とは違うらしいのです。20世紀は正規雇用へ収斂される歴史であり、21世紀は働き方の多様化と拡散の世紀であるという話もあり、失業対策や労務費の削減など短期的視点で非正規雇用を捕らえるのではなく、ワークシェアリングとは雇用機会と労働時間と賃金の組み合わせの最適なバランスを中長期的に実現する施策なのだという事が繰り返し強調されるのですが、それが空しく響くのは私だけだったのでしょうか。中小企業の経営者も多く参加されていたと思うのですが・・・・。

 平成11年就業形態の多様化に関する総合実態調査結果概要は1、非正規員の割合は 27・7%(男14・9%、女47・0%)、2、非正規員の雇用理由の1位「人件費の節約」61・1%、2位が「景気の変動に応じて雇用量を調節するため」30・7%、3位が「1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため」29・6%、3、非正規員就業の理由の1位が「家計の補助、学費等を得るため」34・2%、2位が「自分の都合の良い時間に働けるから」32・8%という報告があり、他にも裁量労働(業務の遂行方法を労働者の裁量に委ねる)における現状の問題点として、働き方が問われず成果だけが問われている実態が報告されました。フォーラム最後の質疑には男性の参加者が多い中で、2人の女性が質問に立ちました。実態調査の結果は男女別に集計し、男女別の問題を明らかにすべきではないか。又労働省が行った現行パート労働法検証結果はどうなっているのかという質問であったかと思います。今問われている非正規雇用の対象はその多くが女性である現状があり、まさに女性の問題であることを改めて強く認識させられるものでした。

 1982年オランダは高い失業率(11・4%)に悩み、政労使においてワッセナ合意がなされ、税制、社会保険制度、労働法改革によりパートタイム労働が増加し、オランダの奇蹟といわれる低失業率を達成しました。これが所謂オランダモデルと言われるものらしいのですが、結果、男性パートタイム労働者が増加したとはいえ、やはり女性パートタイム労働者が大半で、男女が等しく自己選択出来る環境が整備されたのか疑問をもっています。21世紀の新しい働き方の枠組みは現行制度の一部の改革では達成出来るものではなく、男女の問題を含めて全体的な制度の見直しがなされなければ納得出来るものではないという感想を持った次第です。 


2000-12-31|HOME|