「純子の見聞録」元気ネットワーク2002年12月
「川と海の再生」
豊かな海づくり大会が長崎県で開催されました。イベントそのものの開催に長い準備期間と莫大な人・物・金が投入されました。豊かな海の再生という本来の意義や目的達成につながるものであってほしいと切に願っています。今回の大会は22回目にあたり、22年の間大会が続けられてきましたが、しかし水産業を取り巻く状況や海の環境悪化は深刻さをましています。資源管理の不備で乱獲による水産資源の枯渇、また海の生き物の産卵場である藻場の減少が資源枯渇に拍車をかけています。近年の佐世保市中央卸売水産市場の会計報告からも状況悪化が如実に現れています。
藻場の消失・磯焼けの原因としては@水温、栄養素などの海況変動、A台風、淡水の大量流入などの一時的な環境変化、B植食動物による摂食、Cサンゴ藻などによる着生阻害、D過剰な収穫、E海水汚濁による透明度の悪化、F土砂の流入、G工場からの廃水、H生活廃水などからの界面活性剤の流入などが考えられていますが、1つだけの原因ではなく複合的な作用によるものと考えられています。
去る11月2〜3日、幸運にも琉球大学・比嘉教授の高知県視察に同行することが出来ました。EMの発見者として著名な教授はその前日風呂で滑って足の爪を剥がしてしまったと平然と言われました。普通だったら歩行もままならないほど痛みがあるはずだと思うのですが、2日間の視察日程はハードなものであったにも関わらず、常に柔和な表情で長時間の歩行もしっかりされていました。その不思議の秘密はEMにありました。EM発酵液を直接、傷に使用するだけで痛みがないということなのです。EMとは有効微生物群を指します。数年前、EMを使った生ごみ処理の取組みが各地の自治体で話題になり、可児市を視察したことがありました。その後佐世保市議会でもEMの活用について議会質問がありましたが、その際の市長答弁は確か、「人為的に大規模な介入をすることは微生物生態系へ影響を与える懸念がある」とのことだったように記憶しています。私も農学の専門家である市長が言うことも一理あるように判断していました。その後、議会で話題になることもなく私の関心も薄れていたのですが、今回、土壌改良剤として始まったEMの活用方法の多様さと可能性の広がりに驚かされています。またその研究に生涯を賭けられた教授の信念と静かな気迫に直接触れたとき、安易な批判は許されないと思うと同時に、真摯な姿勢で今一度学ぶ必要があると思っています。
視察はまず、土佐市の宇佐漁協を訪れました。地元関係者と県・市の水産行政担当者が協同でEMを使った河川と海の浄化に取組まれています。次に宇佐港に開口する仁淀川の上流にある池田町を訪ね、清流を取り戻す活動に取り組まれている地元の方と渓流を歩きました。河川そしてそれに繋がる海の浄化は流域全体の課題であるという認識があって、連携した取り組みを視野に入れつつ活動されています。翌日は物部川漁協の方々と物部川を訪れ、川の汚染状況を伺いました。行政の支援はありませんが漁協独自で浄化の取組みを始められています。このような地道な市民レベルの活動に行政の支援が各地で徐々に広がろうとしています。川・海の再生への政策財源は実効あるものにと改めて思っています。
橋本純子(佐世保市議)