「純子の見聞録」元気ネットワーク2003年3月


「多忙な医療現場」

毎月開催している「井戸端会議」。2月の会議は医療問題に終始しました。「最 近、公立病院で乳癌の手術を受けた友人は、術後のリハビリもそこそこに、メンタル 面のケアもないまま退院させられた。しかし同じ乳癌で民間の病院で手術をした友人はそんなことはなかった。どうしてそうなるのか?」という問題提起がありました。

 診療報酬の関係で在院日数の短縮が病院経営上求められている状況は官民双方にあ ると思うのですが、詳細な状況は分かりません。医療制度改革の中でわが国は病床数 の多さや入院期間の長さが問題になっていること、高齢化進展や医療の高度化などで 医療保険財政が悪化していること、公立病院であっても平均在院日数17日をクリアす ることが経営方針になっていること、医療機関は機能別に分化していることが話題に なりました。しかし、その後の感想は意外にも「橋本さんは退院させられたことは当 然と考えているようだが納得いかない」というものでした。

  わが国の医療制度の抱える問題はあまりにも多すぎて理解しがたいものであること は確かですが、医療を受ける側の言い分に応える説明になっていなかったことだけは 確かなようです。医療現場に働いていた者としては患者さんの要望に応えられないも どかしさと歯痒さは常にありました。これでいいとは決して思っていませんでした が、しかしこれ以上どうしろというのかといった状況で働いていたことをどうしても 強調したい思いです。さらに働く環境はますます厳しくなっている現在の状況を同僚 だった仲間に聞くにつけ、私自身の無力さを感じています。

 小児科看護に従事していた時のひとこまです。ベット数40床の病棟の深夜勤務は二 人でやります。約半数の患児が24時間持続点滴。まずそれぞれの点滴ボトルが空にな る時間を速度に応じて計算し、準備をします。またそれぞれに8時間ごとに抗生物質 を注入しなければなりません。ベビーには3時間ごとにミルクの時間がやってきま す。そのときは確か人口呼吸器を装着している患児が2名いました。気管内に挿入し たチューブは小児の場合、細く、1時間毎といったように頻回に分泌物を吸引しなけ ればチューブが詰まって窒息してしまいます。また、早朝にやらなければならない採 血・採尿など検査の準備もしなければなりません。排泄の介助もあります。そんな 中、病状が急変し、救命処置を開始しました。スタッフは主治医を合わせて3人で す。それぞれが心臓マッサージ、呼吸管理、残る1人が薬液注入などの処置を担当。 その間他の患者さんの処置はどうなるのか想像してみてください。背筋が寒くなる状 況です。急変が重なることもあるのです。新たな入院が深夜帯にあることも小児科で は珍しくはありません。綱渡り的状況下で常に医療事故の危険をはらんでいるのが現 実なのです。

 わが国の医療制度の問題点はどこにあるのか?看護に限って言及すると、看護師数 の国際比較は人口当たりの数において他の先進国に比べ遜色はありませんが、病床あ たりの数において少なすぎるという点にあると考えています。

橋本純子(佐世保市議)

 

2003-3-5|HOME|