「純子の見聞録」元気ネットワーク2003年8月


「健康長寿のまち」

 今年の文教厚生常任委員会行政視察は「健康づくり」を主たるテーマに3市を 訪問しました。

 まず、最初に訪れたのは健康長寿日本一で有名な長野県佐久市でした。本州のほぼ 中央に位置する標高700mの高原都市です。梅雨の季節でしたが天候に恵まれ、浅 間山と八ヶ岳を遠くに眺めつつ、広大な敷地を要する長野牧場を通り抜け進むと、ど こか異国にでも来たような面持ちになってきます。佐久市の人口は6万8000人。 高速道路や長野新幹線など交通網の整備が進み、東京まで69分という近さです。通勤 圏ともなっています。また日帰り観光客も多く、人口は少子高齢化のなか年々増加傾 向にあります。

 健康長寿の秘訣を縷々ご説明いただきました。ここで詳しく佐久市の健康福祉施策 の報告をしたいところですが割愛し、感想をひとことで言うと健康長寿の街は一朝一夕には出来ないということです。健康長寿とはただ単に長寿であるというのではな く、健康で、活動余命が永いことを言います。亡くなる直前まで元気に働いて、最期 は自宅で迎えるという理想的な生涯を送る人が多いのです。結果、老人医療費も介護 保険料も全国平均を下回っています。

  視察の後、明治の草創期に建てられ、重要文化財として保存されている洋風建築の 学校・旧中込学校を案内して頂きました。当時、一寒村であったにもかかわらず、村 内全戸の篤志家が田畑を売り払い、その寄付によって建てられたということです。教 育にかける意気込みが伝わってきます。その横に真新しい建物がありました。お尋ね すると、関係資料の収蔵館ということです。それも地元篤志家の寄付によるものとの ことです。

 また、会館20周年に当たる市立近代美術舘へも案内して頂きました。「油絵」の特 別展が開催されていて、学芸員の方が案内して下さいました。ちなみに3人の学芸員 がおられるとのことで、わが市では考えられないことです。また失礼ながら人口6万 人規模の自治体では考えられない建物であり、収蔵品の多さです。お尋ねすると、す べて地元出身の方の寄付によるものだということです。またその篤志家の意思を継い で、美術館の運営財源を確保する施策の選択にも頭が下がります。まさに教育県長野 であり、人づくりに財源を惜しまない気質が受け継がれているのでしょうか。

  健康長寿の要因として、人づくりに努力してきた結果につながる長野県人気質が、 大きく関わっているのではないかと思うのです。社会環境要因として2・3世代同居 率が高いこと。それによって長寿に良い伝統的な食習慣が受け継がれています。また 戦後すぐに始まった保健指導員制度が今も活発に活きていること。主婦を中心とする 保健指導員は任期2年のボランティアの制度であり、延べにすると一万四千人の方が 活躍され、自分の健康は自分で守るという意識が家庭の中から育てられていて、健康 に対する市民の意識が高いことが大きな要因になっていました。郷土愛に根ざした地 域の共生力の高さにも長寿の秘訣があるのではないと考えます。

橋本純子(佐世保市議)

 

2003-8-9|HOME|