「純子の見聞録」元気ネットワーク2003年11月
「欧州視察報告」
11日間の日程で初めての海外視察に出かけました。関西空港からオランダ・アムステ ルダム・スキポール空港に到着。そこからすぐにスウェーデン・ストックホルム・ アーランダ空港へ移動。正味約15時間かかって第一番目の視察地スウェーデン・ス トックホルムにようやく到着です。翌日はライン川の河口に近い街、ロッテルダムへ 国内バス移動。その後の移動は第2番目の視察国オランダ・アムステルダムへ空路で 逆戻りです。第3番目の視察地ドイツ・フライブルクへはスキポール空港からスイス ・チューリッヒ空港を経て、ライン川に沿ってバス移動。国境(EUの統合で国境を 感じさせない。入国手続きも簡易)を越えドイツ入りです。最終の視察地フランス・ パリへはバスでまたライン川に沿って下り、国境を超え(ここでも国境を超えた認識 はまったく無い)フランス・ストラスプールへ移動し、さらにフランス国有鉄道でパ リ北駅(パリには旧市街地を取り囲むように5つの鉄道の終着・始発駅があり、市街 地を通り抜けていない。)に到着。帰路はパリ・シャルルドゴール空港からスキポー ル空港を経由し、関西空港から福岡空港に帰着といった日程でした。
視察中は時差ボケもあって、考えるのは後でゆっくりなんて思いつつ、見られるも のは見、聞かれるものは貪欲に聞き、詰め込むだけ詰め込んできたといった感じで す。何処をどう移動したのか、なぜそうなっているのか、あれはそういうことだった のか等々、今、振り返り、思い出しながら書いています。移動で様々な交通機関を体 験できたことも貴重なものですが、肝心の視察テーマは「象さんの足」を触ってきた だけなのではないかというような強行でタイトなスケジュールでした。
スコットランド市の視察テーマは福祉政策(少子高齢化)と教育です。ノーベル賞 の受賞式後の晩餐会会場となることで有名なメーラレン湖畔にあるレンガ造りの市庁 舎を訪れ、福祉政策について、地方議会の仕組みも含め元市議会議員をしていたとい う女性の広報担当者から説明を受けました。教育については私立モバイル高等学校を 訪問しました。1990年の教育改革によって、私学やフリースクール等が認可され ました。この学校はインターネット教育を中心にした単位制の私学です。しかも通信 技術において世界的な企業であるエリクソンの社屋が立ち並ぶ広いエリアの一角に立 地されています。これも教育的効果を期待してのことでした。これは教育と職業につ いて考えさせるものでした。
アムステルダム市とロッテルダム市の視察テーマは都市計画と街づくりで、まずア ムステルダム市の「都市計画情報センター」を訪れました。説明は市の都市計画担当 職員からです。古い教会を利用した「都市計画情報センター」はビジュアルに街づく りの状況が理解できるようにしてあります。市民のための情報提供の場が市街地のに ぎやかな場所にあり、合意の下の街づくりに欠かせないものではないかと思われま す。その後未だ営々と続く干拓の状況や再開発プロジェクトの現場を車上から視察し ました。ロッテルダム市ではオランダ建築協会を訪問しました。ここは近現代の建築 学に関する研究所であり、古文書館ともなっていて貴重な資料が保存されています。 または一部は展示され公開されています。研究員の方から詳細な館内の説明とを受け たあと、1982年に立てられたユニークなサイコロ型集合住宅などを視察しまし た。街全体のデザインにこだわるエネルギーは驚きでしたし、それを可能にするもの は土地の所有形態が日本とやや違う点ではないかとも考えました。
フライブルク市のテーマは環境保全政策です。知る人ぞ知る世界的に有名な環境都 市です。大きな期待を持って訪問しました。11世紀ごろから約300年かけ完成した 大聖堂の隣にある歴史的商館にて(市の施設として使われている?)ドクターの称号 を持つ市の環境政策担当者から説明を受けました。原発反対運動を契機にただ単に反 対するのではなく代替案を提案していこうという基本姿勢で様々な環境政策が進めら れてきた経過があります。交通プラン、再生可能なエネルギー政策、廃棄物対策など 多岐にわたる説明の後、廃棄物のリサイクル委託先である民間企業を視察。車の乗り 入れが規制されている中心市街地はシショッピングやカフェテラスで憩う人々で活気 に満ち、大変美しい街でした。
パリ市のテーマは地方行財政制度です。財団法人「自治体国際化協会パリ事務所」 の職員の方からレクチャー。大まかに地方行政は州、県、コミューン(基礎自治体) からなります。それぞれの行政機構と議会の仕組みやそれぞれの役割と財源について 伺うことができました。フランスの人口はわが国の約半分、しかし基礎自治体の数は 約36000と日本の約10倍です。しかも2000人以下の自治体が約90%とほとん どを占めています。過去に合併の試みがあったそうですが、うまくいかず、現在多く の事務事業が様々な形で広域で行われています。
今回の視察でフランスばかりでなく欧州のほとんどの地方議会制度が日本の二元代 表制とは大きく異なることに大きな関心を持つと同時に日本の現状に改めて疑問を 持っています。ご報告したことはまだまだあるのですが、紙面の関係で駆け足になっ てしまい残念です。
橋本純子(佐世保市議)