「純子の見聞録」元気ネットワーク2003年12月


「縦割りの弊害」

  つい先日、ある町の行政職員と佐世保市の観光開発について、議論の機会がありまし た。彼自身は観光とは縁のない技術吏員であるということではありますが、彼の口か ら「僕には関係ないから知らない。そうでなくても忙しいのによそのセクションの事 など首を突っ込んでなどいられない。もし仮に言いたいことがあっても、よそのこと に口は出せないし、自分の仕事にもまたよそからいろいろ言われたくない。」という 言葉が飛び出しました。気楽なプライベートな会の中の発言なのでつい口走った本音 だったと思われます。縦割りの弊害が言われて久しい中で、ほとんどその体質が変 わってない発言に驚かされます。行政のプロフェッショナルだからこそ知らないと突 き放すのではなく「へえ、そうなんだ」と耳を傾け、縦割りの溝を埋める方策につい て一緒に考えていただきたかったと思うのです。

 彼だけが特異な考え方を持っているとは毛頭考えていません。議員として幾度とな く「縦割りの弊害」の問題について考えさせられることがあるからです。地方分権の 流れの中で、職員の政策立案能力が期待されています。そこには全体を俯瞰すること から始め、そして自分自身に与えられた課題を見つめることが重要であることは言う までもありません。全体を見るとは自治体内にとどまらず、世界を見、時代を見るこ とにまで広がりを見せます。一人の能力には限りがあることは言うまでもありませ ん。だからこそ多くの人々の英知を結集して、初めて目的が達成されるのではないか と思っています。これまで多くの組織運営に関する研究と様々な試みが行われてきま した。わが市においても様々な機構改革や人事研修等々が行われ、横断的なものの見 方考え方が考えられて来ました。しかし、それでもなお中央から地方まで縦割りの弊 害を実感させられ、意識改革が進まないことは致し方のないことなのでしょうか。

 市町村合併論議が活発になる中、今議会にも2町との合併法定協議会設置の議案が 予定されています。小さな自治体ほどユニークな政策があります。それは全体をよく 見渡せるということとコミュニケーションが容易な範囲であるということの効果では ないかと考えます。図体の大きくなった自治体ほど地域特性には多様性があり、一体 感をもてず、全体としてのアイデンティティを見出せずにいるように思います。 財 政上の問題は重要な問題としても、基礎自治体の定義を、権限を含め今一度考えて見 る必要があるのではないかと思っています。制度の見直しが不可能であれば、それぞ れの地域特性を認め合う仕組みづくりが必要になってくるのではないでしょうか。

 最近の事例ですが、ある住民のお訴えを調査する中で、3つの部署が関係している ことがわかりました。「それに関して、私どもは関係ない。」と突き放す部署もあり ましたが、「いったい全体、どこがリーダーシップを発揮し、調整するのか」と訴え る私に「全体を集めて調整してみます。その方が効果を上げると思います。」と言っ てくれた部署がありました。縦割りの弊害は意識改革と熱い思いそして汗をかくこと で乗り越えられるのではないでしょうか。

橋本純子(佐世保市議)

 

2003-12-7|HOME|