「純子の見聞録」元気ネットワーク2004年1月
「石木ダム事業の再評価」
各分野の国の公共事業に対して再評価システムが導入されています。今年度は石木ダ ム事業の再評価が実施されることになっています。つまり国庫補助を受けて実施する 環境衛生施設・水道施設整備事業は水道事業者である佐世保市が再評価をするので す。石木ダムは治水と利水の目的を持つ多目的ダムであることから、昨年8月、川棚 川の治水を管理する長崎県は、国土交通省の再評価システム要綱に沿って、治水に関 して長崎県公共事業再評価監視委員会に諮問し、結果、「石木ダム事業継続」の答申 が出されました。しかし、「平成16年度に見直される佐世保市の水需給見通しの結果 を見て再検討する」という異例の附帯条件が付けられました。これは暗に、治水事業 の再評価としてはダムが不必要であることを認めたようなものです。
前回5年前、佐世保市が実施した水需給予測の見直し検討や再評価監視委員会の開 催にあたって、私は大変不満に思っていました。そのプロセスが恣意的であり、市民 の皆さんへの情報公開が不透明であったことを、先の12月定例議会で指摘しました。 積極的に是正するとの答弁には大変満足し、今後の経過を見たいと思っているところ です。
しかし、質問時間の関係で指摘できなかったいくつかの疑問点をここで整理したい と思います。
1つに、佐世保市の将来人口の推計方法です。佐世保市総合計画等基本的な政策推 進に使用されている統計法はコーホート変化率法が使用されているのに対して、水道 局の給水人口の将来推計にはコーホート要因法で検討されていることです。前者に対 し後者が高い数値が得られます。佐世保市全体の施策推進に整合性がとれていないこ とを指摘せざるを得ません。
2つに、ダム本体の建設費がどのように佐世保市水道料金に付加されるのかは一定 明らかにされています。しかし川棚川から佐世保市までの送水コスト、取水施設、送 水管、ポンプ場、貯水槽、浄化施設の整備、その他のランニングコスト等は丸ごと佐 世保市の負担になるにも関わらず未だ公表されていません。ダム本体の建設コストの 佐世保市負担分を超えるかも知れないとも言われているこれらのコストも当然水道料 金に付加されることになります。
3点目として、渇水の危機管理として1日最大給水 量の過去の最大データが示されます。果たして私達は人為的に最大給水量を減らす努 力を本気でしてきたのでしょうか。独立採算が求められる公営企業としての水道事業 では節水のインセンティブが働きにくいことに対し、根本的な議論がなされてこな かったのではないでしょうか。節水すればするほど水道事業運営を圧迫する現在のシ ステムは問題であり、節水努力の結果として、水道事業運営自体に税金が使われるこ ともよいのではないかという議論を避けていてよいとは思えません。
近所の洋食屋さんで見るともなく、めくっていた週刊文春に、どこかで見たことあ る佐世保市内の商店街の写真が左右一面に掲載されていました。写真のコメントは水 道を流しっぱなしにしながら、お掃除をしている状況に対して、ダムに沈もうとして いる地域があるというのに何と言うことかと、佐世保市民の節水意識の無さに抗議 し、揶揄するものでした。
橋本純子(佐世保市議)