「純子の見聞録」元気ネットワーク2004年7月


「守秘義務とは」

 大久保小学校で起こったあの痛ましい事件は、想像を越えた出来事であり、今、大き な衝撃と深い悲しみ、そして沈うつな思いが佐世保市全体を包んでいます。教育改革 に本格的に取り組もうとしていた矢先の事件だけに、私たちはこの事件をどのように 受け止め、新たな思いで今後どこから始めなければならないのか、重たく大きな課題 が突きつけれています。

 事件の要因については、様々に取り上げられていますが、多くの複合的要因によっ て起こってしまったことであり、何か一つの要因に解決を求めることは出来ないこと だけは誰もが認めるところです。安心して子どもを生み育てられる環境、そして子ど も達自身が自律的に安心して育ちゆく環境、それらすべてを危うくしてしまった社会 的背景は何なのか。情報化社会など急速な技術革新も加わり、おそらくその修復に は、壊れるのにかかった時間を越えて、気の遠くなるような時間と取り組みが必要で あり、地道に努力を続けていくしかないのではないかと思っています。

 今議会には、今回の事件を受けて、大久保小学校の改修事業、臨床心理士あるいは 相談員派遣事業など緊急的対応の予算が追加上程されました。その議論の経過はさて 置くとして、六月議会での私の一般質問は相談事業のあり方について取り上げまし た。これは今回の事件を受けてのことではなく、以前からご相談を受け、私なりに調 査に取り組んでいた課題でした。緊急的課題の山積みする中で、あえて取り上げた理 由は、子ども達の心の悩みや子ども達が発するシグナルに、どうしてもっと早く気づ けなかったのか、今回の事件において、大変悔やまれるからです。

 調査する中で、改めて痛感したことは、教育界の閉鎖性の問題です。もちろん、こ う言いきってしまうだけの明確な根拠を示すほど、教育界に精通しているわけでもあ りません。大変失礼なこととは思いつつ、ごく普通のおばちゃん議員の独断的な感性 での意見を述べました。
 質問の趣旨は相談事業等々で得られた情報が、学校内で貴重な情報として共有化さ れていないという実態があることでした。その理由として職業倫理としての〈守秘義 務〉の考え方をご説明いただいたのですが、私の思いとはずいぶん違うことにやや奇 異なものを感じています。

 私は医療現場で約20年余り看護師として働いて来ました。〈守秘義務〉については 「ナイチンゲールの誓い」に始まり、学生時代からいやというくらいに叩き込まれま す。そのことを前提に職場はチーム医療が原則であり、様々な職種の役割を欠くべか らざるものとして尊重しつつ、医師をチームリーダーとして可能な限り情報を共有す ることが必須でした。加えて、医師をはじめとする各専門職においても、一人よがり の方針決定は許されず、基本的には合議の中で方針が決定されます。病気を治すとい うことは、言うまでもなく信頼関係の構築を土台に精神面、社会面にも目がむけら れ、全人的な視点からのキュアとケアです。夜勤などでは何十人という患者さんの情 報を可能な限り収集し、すべてを記録し、次へ繋いでいかなければなりません。

 医療にかかわった私の〈守秘義務〉の考え方と教育界の考え方の違いを良く理解で きないでいます。医療と教育を一様に論じることは無謀かも知れません。TT (ティームティーチング・2人以上の教師がティームを組んで、子どもたちを指導) という考え方も出てきていますが、学級経営に一人悩む担任教師という図式のシステ ムは早急に改善されねばならない問題なのではないでしょうか。

橋本純子(佐世保市議)

 

2004-7-2|HOME|