「純子の見聞録」元気ネットワーク2004年8月


「食の安全性について」

 食の安全性が揺らぎでいることに人々が気づき始めてずいぶん久しい。このところこ のことに関連する勉強会や地域の環境市民団体が主催する講演会に参加する機会が立 て続けにあったこともあって、「食の安全」について改めて考えています。「食の安 全」という切り口からまたそのことを糸口に、身近な子育ての問題から地球規模の問 題まで、壊れかかったいや壊れてしまったすべての様々な社会問題が見えてくること に人々は気づき、危機感を募らせているように思います。以下、私の最近の見聞録を ご紹介いたします。

 佐世保市では由々しき課題との認識からか、子どもたちの食事と睡眠の習慣の実態 を知るためのアンケート調査を実施し、その結果を公表しています。佐世保市の子ど もたちの置かれている「食事と睡眠」の環境が、全国的にみて特有のものではなく同 じような傾向にあるのでしょうが、その結果として表れる影響には看過できない ショッキングなものがあります。

 環境学習に熱心に取り組んでいる市内の私立高校が、環境市民団体と連係し、地域 住民にも参加を呼びかけて講演会が開催されました。様々な環境ホルモン・化学物質 による環境汚染が、知らず知らずのうちに、脳を始めてとするあらゆる器官の正常な 発達を阻害、影響を与えている可能性が高いというお話に、猛暑の日であったにもか かわらず、高校生を初め多くの参加者は熱心に聞き入っていました。しかし、どう やって安全な食品や安全な暮らし方を選択すればいいのか、何が安全なのかが見えな い中で不安が募ったのは私ばかりではなかったはずです。

 無農薬・減農薬・有機農産物の生産者と消費者の団体である「西海無農薬野菜の 会」が開催した「食の原点・命の原点−スタートは母乳育児から」に参加しました。 講師の新潟青陵大学看護学科の浦崎貞子氏は、豊富化経験から日本古来の食生活の重 要性を指摘されていました。そのことを基本した母乳育児のお話しは、分りやすく、 興味深いものでした。参加した子育て真っ最中のお母さんからは離乳食、食物アレル ギー等等質問が相次ぎ、日頃の子育てに対する不安がうかがわれました。

 最近参加した議員研修会のテーマは「日本の食料政策」でした。全国各地の地方議 員からは関連する問題として「学校給食をめぐる課題」が報告されました。地域活性 化策にも繋がる地場農産物の利用、目で見て安心安全を確認できるスローな社会への 回帰、有機農産物や旬を考慮した食材の利用、給食残渣の堆肥化による環境学習、給 食用食器の環境ホルモン溶出の問題、食品アレルギーの問題、米飯給食、財政問題 等々書き尽くせないほどの議員としての学校給食をめぐる課題が確認されました。ま た、農林水産省職員による講義は「日本の食料政策」でした。中央省庁としては最も 長い100年の歴史を持つ農林水産省なるが故の問題点して肥大化し、硬直化した組 織改革の困難性やBSE事件後、食品行政に対する国民の信頼を揺るがす問題が続 出、消費者に軸足を置いて政策へと転換、旧農業基本法から新たな食料・農業・農村 基本法へと、これまでの農政の歴史と課題についてお話しいただきました。

「食の安全」には「食品の安全」ともうひとつに「食料自給率」つまり食料の安全保障の問題 があります。年々低下している自給率の問題に関する質問に答えて、講師は日本人の 食文化の多様化、欧米化はそもそも自給率を云々することすら難しいにではというご 意見でした。そもそも日本での生育に適した農産物を国民が食べなくなったのは農政 による誘導ではなかったのでしょうか。消費傾向がお米が小麦に置き換わるのも国の 政策が大きく関与したことはいうまでもありません。どの農産物の自給率を確保する のか。政策によって国内における生産と消費を拡大・維持していくのか。外交・経済 政策とも絡んで重要な政治の決断であると思っています。

 つい先日開催された藤田祐幸氏の講演会(主催・藤田祐幸氏を佐世保に呼ぶ会)。 世界各国に広がる放射能汚染の実態、劣化ウラン弾や原発事故による汚染など、現地 調査に基づくお話しがスライドを交え講演されました。少し遅れて参加したことも あって、最後に話された内容が印象に残っています。気が遠くなるような半減期を持 つ放射能によって汚染が拡大していく地球の実態を見続けた藤田氏は、放射能による 環境汚染のない、緑豊かなわが国の国土を守り、与えられた太陽エネルギーの範囲内 で、安心な農作物を耕作し、スローな社会の実現こそが、ひいては戦争のない社会を つくることになるのではないでしょうかと締めくくられたようにお聞きしました。

橋本純子(佐世保市議)

 

2004-8-5|HOME|