「純子の見聞録」元気ネットワーク2004年9月


「長崎県小値賀町視察を終えて」

 現行合併特例法の期限が迫っている今、市町村合併の論議が大詰めを迎えています。 その中で、すでに佐世保市との任意合併協議会を脱退した小値賀町と、あくまでも合併 をとの判断で話し合いを続行している宇久町との違いはどこからくるものだろうかと いう素朴な疑問を持っています。佐世保市にとっては宇久町も小値賀町も外海離島と いう様々な点で不利な環境にあることは同じなのではないかと思うからです。
 百聞は一見に如かず、ということで一度も訪れた事のない宇久町と合わせて小値賀 町を視察させていただくことにしました。

 殊に合併しないという選択をした小値賀町(今後8月29日には佐世保市・宇久町と の合併の是非を問う住民投票が予定されていますので、この原稿がお手元に届くころ には状況が変化しているかもしれません。)の判断の根拠を可能なかぎりこの目で確 かめて見たいと考えました。
視察をお願いした日は合併問題を担当する方が不在とい うことで、助役自らが町が抱える課題とともに主な施設や観光のスポットを島内一周 しながら説明して頂きました。また、「現時点では非合併」という結論に至るまでの 論議の過程についても伺いました。
「岐路に立つ小値賀を考える特別委員会」を立ち 上げ、様々な角度から議論がなされ報告書が作成されています。その報告書からは、 非合併の結論を見出した覚悟の程が伺われます。今後10年間の町政運営における財政 シュミレーションもなされ、国のいわゆる三位一体改革の不透明な中で考えうる限り の最悪の仮定もなされています。
長崎県の指導ではその根拠の曖昧さが指摘されてい るようですが、分権時代に即した行政能力の有無についても自ら触れられ、その結果 としてこの報告書があると考えるなら良くぞここまで仕上げたものだという感想を持 ちました。

 ここでぜひ小値賀町特有の地域文化に触れなければなりません。様々な不利な環境 を持つ自治体においては、その運営にあたっては地域共同体の結束の強さが欠かせま せん。
数年前に小値賀町が官学連携でまとめた「西海に浮かぶアルカディア小値賀」 という冊子を読ませていただきました。多方面から分析が加えられ大変興味深いもの になっています。
かなり古くから多くの学者がここを訪れ、コミュニティ研究の素材 になっていたことが分ります。離島という限定されたエリアとして純粋モデルがそこ には形成されています。
民生委員の出る幕のない「助け合いの生活文化」が今も息づ いています。「寄り合い」という社会システム。内発的発展に欠かせない人材育成。 資源管理に配慮された農林水産業のルール等々。
小値賀町の風景からもその歴史が伺 われます。緑を守り育てた豊かな山々。手入れの行き届いた田畑。炎天下のなか働く 農家の人々。青々と透き通った海ともに印象に残りました。まさしく「アルカディア (牧歌的理想郷)」と言えるものでした。
非合併という厳しい選択は、町民全員でこ れまで築き上げてきたこれら大いなる財産が根拠になっているのであろうと、ひとり 納得しながら夏休みの帰省客で賑わう船に乗り込みました。

橋本純子(佐世保市議)

 

2004-9-2|HOME|