前畑弾薬庫敷地火災で緊急の申し入れ


全焼した前畑弾薬庫内の倉庫(10.23 撮影)

21日に起きた前畑弾薬庫敷地内での火災について、原田正市議会議員(リムピース運営委員)や佐世保地区労などが真相究明と安全確保対策の明確化を求めて佐世保市に申し入れを行った。

 席上、原田市議は、今回の火災発生を米海軍佐世保基地が佐世保市側に通報せず、また再三再四にわたる佐世保市消防隊の応援を拒否し、結果として消火活動が遅れ鎮火まで4時間以上もかかるなど、周辺住民の不安が拡大したことを指摘した。
そのうえで今回の事件について米海軍佐世保基地が事実経過を報告し、再発防止策を明らかにすることを求めた。

これに対し佐世保市は助役が応対し、佐世保市長が米軍に対し状況の説明を文書で回答するよう求めたことを明らかにした。

 しかし、今回の火災で米軍の消防体制や能力に重大な不備があることが明らかになった。
 その1、消防車両など機材の決定的な不足(大型消防車は2両だけ?)。
 その2、アセチレンガスや油類に対する消火能力の欠如(消火剤の不備?)
 その3、出火から消火開始までの遅滞(連絡体制の不備?)
 その4、消火活動の遅滞(訓練の不足?)

 前畑弾薬庫は旧・日本海軍が建設し、敗戦後は米軍が接収して使用している施設で、輸送施設の不備や外部からの侵入に対する安全対策上の問題が以前から指摘されていた。このため米軍は前畑弾薬庫施設の移転と代替施設の建設を日本側に求めている。消火活動の遅滞の背景に、「移転対象施設」ということでの緊張感の欠如があるとしたら大きな問題である。

(RIMPEACE編集委員・佐世保)

申入書及び回答は次のとおり


2006年10月23日

佐世保市長

光武 顕  様

社会民主党佐世保総支部

代表    原田  正

佐世保地区労働組合会議

議長    指方 寛美

 

申し入れ書

秋涼の候、貴職におかれましてはご健勝にてご活躍のことと存じます。

さて、今月21日午後4時ごろ、佐世保市前畑町の佐世保弾薬補給所内木工所兼倉庫から火災が発生し、4時間半に渡り燃え続けるという事態が起こりました。

新聞報道や目撃者の証言によると、午後2時過ぎから火災が発生していたということから、事実上6時間半にわたる火災であったことと思われます。

当市は「基地との共存共栄」を謳っていますが、今回惹起した事態は大事に至らなかったものの、近隣住民の不安と怒りを助長し市民生活を脅かすというばかりではなく、一歩間違えると市民に大きな犠牲をもたらすものであり、佐世保市民の米海軍への不信感を増幅させたものであると言わざるを得ません。

一方、米軍当局の初動体制や情報遮断などは、日米地位協定第3条3項(『合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行わなければならない』)に抵触するのではないかという疑念を抱くとともに、96年SACO合意「地位協定の運用の改善」「事故報告」(『…米軍の部隊・装備品等及び施設に関係する全ての主要な事故につき、日本政府及び適当な地方公共団体の職員に対して適時の通報が確保されるようあらゆる努力が払われる。』)にも明確に反しています。

また、「消火作業が適切であったか」「消防能力に不備がなかったのか」など、適切な対応が執られたのか大きな疑問と不信感を残すこととなっています。

さらに今月14日には米兵による殺人未遂事件が発生するなど、米兵による犯罪・事件・事故が横行しており、市民生活を大きく脅かす米軍に関連する不祥事は後を断たない状態となっています。

したがって、今回の前畑弾薬庫火災事件について、下記の事項について申入れを行いますので、誠意ある回答をお願い致します。

なお、回答にあたっては具体的文書をもって早急に行われますよう申し添えます。

 

〈記〉

  1. 米海軍に対し、今回の弾薬庫内火災事故に関する正確かつ時系列的な事実経過を明らかにさせるとともに、真相究明へ向けた調査実施を早急に要求すること。

  2. 佐世保市民の生命・財産を脅かした今回の事態に対して、佐世保市長として米海軍当局に抗議するとともに、その責任の所在を明らかにし、再発防止策について具体的かつ実効性ある対策を講じ、これを全ての佐世保市民に公表するよう強く申し入れること。

  3. 今回の事態と米海軍当局の対応及び初動体制の不備を重く受け止め、市民の生命・財産に責任を持つ佐世保市長として、前畑弾薬庫の無条件・即時返還を日米両政府に求めること。

以上


佐世保市が明らかにした経過は次のとおり

(1450ころ 付近住民が煙を確認)

(1600ころ 付近住民が出火を確認、佐世保市消防局に通報)

1616 問い合わせに対し、米海軍基地から消防局に火災の通報

1618 消防小隊出動、弾薬庫正面ゲート入り口に到着

1625 米海軍基地から「鎮圧状態」「応援の必要なし」との連絡

1639 米海軍基地から「メインベースより消防隊追加応援を受ける」との連絡

1659 佐世保市消防局の応援申し出に対し「必要なし」と回答

1734 再度の応援申し出に「非番召集中、応援不要」と回答

1740 米海軍基地から「応援の必要なし」と連絡

佐世保市から状況を周辺町内会に連絡、消防本隊出動待機

1919 「鎮火に向かっている」と連絡

2026 米海軍基地から「鎮火した」との連絡

 

申し入れに対する佐世保市の回答(要約)

22日(火災の翌日)、ペイン司令官が佐世保市に報告のため来所。応対した市長は、火災の原因や事故対策について、明らかになった時点での説明を求めた。結果が出次第米側から説明があると考えている。

 火災の実況見分は米側から立入の案内があり、合同で見分を行なっている。

市長は、市の消防隊が現場付近に待機し、態勢をとっているにもかかわらず、米側から協力要請がなかったことについて疑問を呈し、文書による回答を求めている。

また、消防相互援助協定が有効に機能しなかったことについて、司令官から将来に向けて協定を改善していきたいとの回答を得ている。

前畑弾薬庫の移転・返還については、平成10年、議会の決議を得て議会と行政が一体となって取り組んでいる「新返還6項目」の最上位に掲げ、これまで市の最重要課題として重く受け止め、取り組んでいる。

 


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