ケーブル敷設艦の動きから見えてくるもの

この1年間に佐世保にはケーブル敷設艦ゼウスが延べ13回入港した。このケーブル敷設艦の動きをほかの入港艦船の動きに重ね合わせると違うものが見えてくる。 次の表はケーブル敷設艦と測量艦、原子力潜水艦の入港・出港を一覧表にしたもの。


黒線は佐世保、赤はホワイトビーチ入港期間

ここに取り上げた3種類の艦船がすべてではないが、ほぼ重なるように動いている様子が確認できる。

数年前には測量艦と原子力潜水艦がほぼマッチするように佐世保に姿を見せていた。このときは東シナ海や南シナ海など、これまで米原潜が苦手としていた比較的浅い水深の海域で行動するための環境(海洋情報)調査であったと思われるが、今回のように3種類の艦船が重なり合うように動くのは、また別の目的があるのだろう。

この3種類の艦船に共通するものは「海面下」あるいは「海底」だろう。
かつて東西冷戦が極東の海でも激化していたころ、米軍はソ連極東艦隊の南下を監視するため奄美や沖縄などの琉球弧諸島に長大なケーブルを埋設しSOSUSと呼ばれる音響監視システムを配置していたという。冷戦崩壊後は運用コストの関係もあり、このシステムは廃止されていたようだ。
しかしこの数年、中国海軍が積極的に近海から外洋への進出を目指してきたため、その動向を監視するため再びSOSUSの運用を開始しようとしているのではないだろうか。

海面下で行動する潜水艦の動きを捕捉する方法は音響測定艦による移動式の音響捜索によるものと、海底に設置した固定式の音響探知装置によるものとがある。移動式の場合、潜水艦の行動が想定される海域を常時航海しなければならないが、固定式の場合、屋久島から沖縄に続く琉球弧のように必ず通過しなければいけない場所で待ち構えるだけでいいというメリットがある。

待ち構える場所の海底を調査する測量艦、その場所にSOSUSを設置するケーブル敷設艦、SOSUSの状況をテストするため海中を移動する原子力潜水艦という図式が浮かび上がってくる。

なお、佐世保基地と他の地域の米軍基地はすでに海底ケーブルによる光ファイバーケーブルを使ったネットワークが構築されている。そのネットワークの保全作業のためということも考えられるが、その場合は測量艦も原子力潜水艦も必要ないだろう。

(RIMPEACE編集委員・佐世保)

ケーブル敷設艦と測量艦、原子力潜水艦の入港・出港日の一覧表(詳細)


'2007-1-17|HOME|