放射能漏れ疑惑の中、原潜ラホヤが佐世保出港


抗議の声の中出港する原潜ラホヤ(後ろは米海軍の測量艦ボウデイッチ)

8月1日に明らかにされた原潜ヒューストンの放射能を含んだ冷却水漏れ事故は、実は当初発表の今年2月から5月末までの期間では なく、2006年6月からであることが8月7日になって追加的に明らかにされた。
この期間に原潜ヒューストンが寄港した港は日本の横須賀、佐世保、沖縄・ホワイトビーチのほかにマレーシアやシンガポールも含まれて いる。
まだ、放射能漏れがもれた原因や部位などは明らかにされていないが、「人体に影響を与える量とは考えていない(外務省報道発表)」 と、相変わらず緊張化を欠如した日本政府の対応である。
「人体に影響」とは、広島や長崎などの原爆による放射能被爆を指しているのだろうから、急性放射線障害が起きなかったから安心だ、 ということにはならない。

今回の放射能漏れで問題なのは次のことだろう。
1、放射能が漏れた原因は何か。それはロサンゼルス級原潜に搭載してある原子炉と熱交換システム特有のものなのか。もし特有のもの ならば、ほかのロサンゼルス級原潜(少なくとも688番から750番まで)でも同様の放射能漏れが起きる可能性がある。 航空機の重大事故であれば、同型機は原因究明まですべて飛行が禁止される。原潜も同様に航海をやめて点検されるべきだ。

2、原潜ヒューストンから2年間に渡って放射能を含んだ冷却水が漏れていたということだが、原潜の原子炉区画などには放射能漏れを 感知する警報システムは設置されていないのか。設置されていないのであれば、今後も放射能漏れを発見するのは非常に困難になる。
陸上や海上でのモニタリングでは拡散(空中・水中)あるいは攪拌(水中)されたものを検知するのが容易でないことは明らかである。
 放射能の発生源である原潜などに検知システムが設置され、核動力艦が寄港する場所でのモニタリング体制が充実するまで、寄港は 認めるべきではない。

3、情報の伝達が何ゆえに遅れたのか。放射能漏れについて米国政府から日本政府に伝達があったのは放射能漏れが確認されてから2週間 もたってからのようである。しかもそのことが地元自治体に通知されるまでさらに時間を要している。放射能漏れ事故などの避難は 「とにかく早く、遠くに逃げろ」が原則である。のんびりした連絡体制では避難できない。
新しい原子炉事故防災計画に基づく避難計画が周知されるまで、原子力艦船の寄港は認めるべきでない。

 今回の放射能漏れについて朝長佐世保市長や金子長崎県知事は「原潜ヒューストンの寄港は認められない。」ということを表明したが、 これは放射能や原潜に搭載してある原子炉の特性を理解しない発言だろう。
少なくとも住民の安全に責任がある自治体の長の発言とは思えない。

 原潜ラホヤの出港に合わせ、佐世保地区労や社民党佐世保総支部などが参加し、対岸の岸壁で抗議集会が開催された。

(RIMPEACE編集委員・佐世保)(写真は 08.8.11 撮影)


佐世保基地・前畑岸壁で開催された抗議集会


'2008-8-11|HOME|