米艦船の民間港寄港を見る(97 - 06年)


04年10月11日、新潟港に入港した巡洋艦レイクエリー (読者提供)


06年5月26日、空母リンカーンの随伴艦シャウプ(DDG 86)が清水港に入港した(ファイト神奈川 提供)

米海軍佐世保基地を母港としている掃海艦ガーディアンとパトリオットが六月二十四日から二十六日、沖縄県与那国町の港に寄港したが、昨1年間、日米安保条約に基づく地位協定により外務省に通告があっただけでも、日本各地の民間港に二十八隻もの米軍艦が入港した。この近年、米軍艦船が民間港に入港することが話題になっているが、その直接的な入港の目的は港湾の形状や水深、岸壁の状況といってハード面に加え、住民や自治体の(友好的か否かといった)反応、休養・娯楽のための遊興施設の情報収集という。

周辺事態法や有事法制が制定される前から米軍艦船は日本各地の民間港や自衛隊の基地に入港していたが、この数年、米軍艦船は民間港にどこに、どれだけ入港したのだろうか。

入港数は次のとおり。( )内は日本に配備されている艦船 

暦年

入港延べ隻数

純隻数

1997

20

13(11)

1998

16

7(6)

1999

18

12(12)

2000

23

14(13)

2001

14

9(9)

2002

14

8(7)

2003

18

11(8)

2004

18

12(9)

2005

17

11(9)

2006

28

15(11)

昨年1年間、米軍艦船が日米安保条約に基づく地位協定により入港した民間港は北のほうから 小樽、室蘭、秋田、新潟、境港、仙台、東京、下田、清水、名古屋、和歌山、大阪、姫路、呉(海自桟橋)、宿毛湾、博多、長崎、鹿児島

このほか、この10年間に入港した民間港は上記の港のほか 苫小牧東、石狩湾新港、函館、青森、八戸、塩釜(仙台)、横浜、酒田、金沢、舞鶴、伊東、徳島小松島、徳山下松、高松、下関、門司、別府、大分、佐伯 の各港である。

寄港した艦船の所属はほとんどが日本に配備されている艦船で、この数年相次いだ原子力空母佐世保寄港の折は、随伴する駆逐艦などが各地に分散寄港するケースもある。

米軍艦船が日本の民間港に入港するケースはずいぶん以前からあったようだが、九十二年以降では昨年の延べ二十八隻というのが最も多い。また、米本土テロがあった二〇〇一年、アフガニスタンでの戦争を始めた二〇〇二年は入港回数が減少している。インド洋やアラビア海、ペルシャ湾に米海軍の主力を集中したためと思われる。

− 日本海が焦点 −

「地区毎集計」グラフ は日本を5つの地区に分けた場合の入港数を表している。地区の分類は海上自衛隊地方隊の警備担当区域により、佐世保(九州西方および南方区域)、呉(瀬戸内海および四国南方区域)、横須賀(本州東方区域)、大湊(東北、北海道および北方区域)、舞鶴(秋田以南の日本海)に分けている。

この数年、比較的に入港数が多い地域は呉警備区および横須賀警備区に属する地域である。これを詳細に見ると、呉の場合、毎年二月中旬頃、周防灘や日向水道にかけて定期に行われる日米合同掃海訓練に参加した米海軍の掃海艦二隻が海上自衛隊の基地がある呉、下関、佐伯に入港しているケースが多く、海上自衛隊の基地がない港への入港回数は年間に一隻ないし三隻程度である。横須賀警備区域の場合、伊豆半島・下田で行われる「黒船祭り」に毎年一隻か二隻が参加しているが、その他では第七艦隊の旗艦ブルーリッジが東京港に毎年のように寄港しているのが目立つ。

二〇〇三年、米海軍はMD(ミサイル防衛)のため「日本海に常時イージス艦を配備する」という趣旨の構想を明らかにしたが、二〇〇三年以前は七年間で四回しか入港することがなかった日本海沿岸の港(新潟、金沢、境港、舞鶴)に、それ以降はほぼ毎年米軍艦が姿を見せている。入港する港も酒田、秋田に加え、大湊警備区に属する北海道の日本海岸の小樽、石狩湾新港と、日本海を取り囲むように拡大している。

当初米海軍が発表したようなミサイル駆逐艦などの「常時配置」ということはないが、しかし、海上自衛隊の基地がある舞鶴だけでなく地方港としては港湾整備が進んでいるそれぞれの港に頻繁に入港するということは、将来の軍事的利用を念頭に置いたものといえるだろう。

ちなみに、二〇〇三年四月、ミサイル監視・追尾用に開発されたレーダーシステム「コブラ・ジェミニ」を搭載したインビンシブルが舞鶴に入港している。

− 米軍艦は地方港がすき −

米軍艦船が入港している港を、横浜や神戸のような大規模(主要)9港、新潟や室蘭のような地方港、長崎や別府のような観光地の港、呉や下関のような海上自衛隊の基地がある地方港に分類し、その入港傾向を見てみる。

「港の種類」グラフ で見る限り、地方港への入港が多数を占めている一方、主要港への入港数も毎年十隻前後となっている。また、海上自衛隊の基地がある港には周辺での訓練の前後に入港するケースが多い。

主要港は背後に大都市を持ち、大規模な港湾荷役設備や食糧供給などの補給支援能力を有しているが、それでもやはり戦闘状況になったときに必要に応じてどこの港でも利用できるよう調査・確認しておきたいということであろう。特にこの数年、日本海に面した地方港に相次いで入港していることはMD(ミサイル防衛)のための出動と共に日本海での戦闘も想定しているためではないだろうか。

それと共に、主要港の場合、岸壁が混雑していて使用できないことも多いため、その代替港としても入港を繰り返しているものと思われる。事実、主要港では岸壁が空いていないことを理由に入港を断るケースが多い。

米軍としては、さまざまな地域および形態を持った港の状況を把握し、いつでも使用できるネットワークを構築しているのだろう。

その民間業務(契約)ネットワークの中心は日本の民間会社が担っているのも事実だ。

(RIMPEACE編集委員・佐世保)


'2007-9-1|HOME|