佐世保市議会臨時議会
放射能漏れで意見書採択
米海軍の原子力潜水艦「ヒューストン」から放射能が漏れていた問題で、佐世保市議会は8月21日、「原子力艦船の安全性、監視体制、防災体制の確立がなされないままの原子力艦船の入港を安易に認めない」とし、徹底した原因究明と具体的な再発防止を米国に求めることなどを日本政府に要請する意見書を21日に開催された臨時市議会において全会一致で採択した。
臨時議会に先立って開かれた基地対策特別委員会では、市基地政策局より『米原子力潜水艦「ヒューストン」による冷却水漏れに伴う放射能漏れに関するその後の対応について』説明を受けた。委員会での質疑の中で、古家勉(社民)委員は『放射能漏れという重大な問題を米国が2週間以上も遅れてから日本に通告したことと、外務省が1日遅れて地元に通告したことや、放射能を約2年間も垂れ流していたことを取り上げ、「日米両政府の情報・連絡の遅れを批判。微量であるということでは容認できない。あってはならない放射性物質の漏洩そのものが問題であり、市民感情を逆なでするような政府は許されない」と指摘。
市基地政策局長は「あってはならないことであり、原因究明と再発防止に向け、外務省を通じ米国へ伝えるよう努力する」との答弁。
他の委員からも「基地を受け入れている地元の苦労をまったく分かっていない。北米局長ら事務方ではなく、大臣が対応すべき重大な事案である」「外務省は米国を追及する姿勢が見えない」「人体に影響がないという前に、モニタリング体制に問題があるのでは」「米国からの情報提供は間違いないのか」など政府への厳しい意見が相次いだ。
[意見書全文は下記のとおり]
リムピース運営委員・速見篤
佐世保基地に寄港中の原潜ヒューストン(08.3.31 撮影)
米原子力潜水艦「ヒューストン」の冷却水漏洩に関する意見書
去る8月2日、外務省からの報道により、米海軍原子力潜水艦「ヒューストン」が2006年6月から2008年7月までの約2年間にわたり放射性物質を含む冷却水を漏洩していたことが確認されたこと、そして、その量は人体、海洋生物、環境を危険にさらすものではないとの公表がなされました。
この外務省から本市への通知が、報道機関の問い合わせよりも遅滞していたことは、国防という国策に協力することを基調としている本市との信頼関係上、まことに残念なことであり、また、現時点においても政府関係者による佐世保港への視察あるいは現地での説明責任がなされていないことは、まことに遺憾なことであります。
さらには、放射性物質の漏洩については、微量であるということで容認されるものではなく、漏洩そのものが論じられるべきであります。
頻繁に米海軍原子力潜水艦が寄港する佐世保港を抱える本市の市民にとりましては、放射性物質漏れという重大な事故が発生していたこと、そして、そのことの通知が遅滞していたこと、さらには、モニタリング体制が完備されている状況にないこと、原子力艦原子力防災訓練に米軍が不参加であること等の現状に対し不安と危惧の念を抱いております。
本市議会としても、原子力艦船の安全性、監視体制、防災体制の確立がなされないままの原子力艦船の入港を安易に認めるものではありません。
よって、政府におかれましては、佐世保港における放射性物質漏洩という事態の重要性に鑑み、下記事項が実現されるよう要請いたします。
記
1.佐世保港の安全性に関する政府見解を具体的に示すこと。
2.放射性物質漏洩の徹底した原因究明と具体的な再発防止策を米国に求め、速やかに公表すること。
3.原子力艦の安全性に関する政府見解を具体的に示すこと。
4.今般の事故発生に伴って改善された原子力艦船の安全性に係わる情報の連絡・通報体制を遵守すること。
5.佐世保港におけるモニタリング体制のさらなる充実のために、本市が要望している佐世保港南部地区へのモニタリングポスト増設の早期実現を図ること。
6.本市の原子力艦原子力防災訓練に米軍の参加を要請すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成20年8月21日
佐世保市議会議長 松尾 裕幸
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