低空飛行訓練に関する質問主意書、日本政府の回答




低空飛行訓練に関する質問主意書   提出者 秋葉忠利


低空飛行訓練に関する質問主意書

 
在日米海軍、海兵隊、空軍及び自衛隊機の低空飛行訓練は、日本国内において多大な被害を及ぼしている。これに対する日本政府の対応は、緊急を要すると考える。従って、次の事項について質問する。

一 在日米海軍、海兵隊、空軍の低空飛行訓練に関して

  1. 在日米海軍、海兵隊、空軍が基地間の移動と称して日本国内で8本以上の低空飛行訓練ルートを設定して、低空飛行訓練を行っていることはすでに、高知県早明浦ダムの事故報告書、各新聞社の情報公開による調査、さらには岩国基地司令官室の地図等で明らかになっているが、政府は未だこのルートを認知・公開していない。すみやかに低空飛行訓練ルートの実態を明らかにされたい。
  2. 各ルート毎に訓練回数、飛行の高度、参加機種とその数等の実態も明らかにされたい。
  3. 現在までに政府に届け出、要請などがあった被害自治体の状況についていまだに取り纏めが行われていないのであれば、その作業を行った上で、被害の全体像を明らかにされたい。
  4. 米軍が今後もこのようなルートを使って飛行訓練を行うと仮定して、各低空飛行訓練ルートにある市町村に、訓練の内容、参加機数など事前に明らかにすべきであると考えるが、この点、米軍に求める意思があるか。

二 最低高度に関して
 運輸省令で定める最低高度を固定翼のジェット機について、事故後のイタリアと同様2000フィートにしたら、自衛隊、民間機の飛行に支障が出るか。(離着陸時及び運輸大臣の許可を得た場合を除くという航空法の規定はそのままで。)

三 レンジ型訓練に関して
 ルートと同様にレンジ型と呼ばれる訓練空域が浜田市上空、渋川市上空にあり、様々な被害も出ているが、このレンジ型訓練空域の訓練の内容など実態を明らかにされたい。

四 民間機とのニアミスに関して
 低空飛行訓練と同時に民間機とのニアミスが増加しているが、このニアミスも米軍機から接近しているものが多く、民間機に意図的に接近していると考えられる。このニアミスに関して、米軍機から接近したと思われるものの実態を明らかにすること、また今後の対策を明らかにされたい。

五 自衛隊機の低空飛行訓練に関して

  1. 自衛隊機の低空飛行訓練による事故が相次いでいるが自衛隊の低空飛行訓練の目的、実態、訓練ルートについて明らかにされたい。
  2. 自衛隊機は低空飛行訓練を陸上で行っているか。

右質問する。



答弁書
内閣衆質一四三第二二号
平成十年十一月十三日

内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 野中広務 衆議院議長 伊藤宗一郎殿

衆議院議員秋葉忠利君提出低空飛行訓練に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



衆議院議員秋葉忠利君提出低空飛行訓練に関する質問に対する答弁書

一の1、2及び4並びに三について

 米軍は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)第六条の規定に基づき、我が国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、我が国において施設及び区域を使用することを許されている。米軍がかかる目的で我が国に駐留することを同条約が認めているということは、別段の定めがある場合を除き、米軍がかかる目的の達成のため、飛行訓練を含め軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことを当然の前提としているところ、米軍は、個々の飛行訓練の内容等について、我が国への連絡を行う必要はない。

 米軍の飛行ルートについては、米軍が、飛行訓練の目的達成、飛行の安全確保、住民への影響抑制等の必要性を安定的に満たすとの観点から、一定の飛行経路を念頭において飛行することがあることは承知しているが、御質問の具体的ルートの詳細等は、米軍の運用にかかわる問題であり、承知しておらず、また、これらを事前に明らかにするよう米側に求める考えはない。

 一方、米軍は全く自由に飛行訓練を行ってよいわけではなく、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであることは言うまでもない。政府としても、日米合同委員会等の場を通じ、米側に対し、安全確保に万全を期するよう申し入れを行ってきている。米軍も、この点には十分に留意しており、低空飛行訓練を行うに際し、最低安全高度に関する法令を含め、我が国法令を尊重し、安全面に最大限の配慮を払うとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう努めている旨明らかにしている。


一の3について
 政府として米軍機の低空飛行訓練に伴う被害の全体像について、必ずしもそのすべてを把握しているわけではないが、平成六年度以降に約80の地方公共団体の議会から提出のあった米軍機の低空飛行訓練の中止を求める政府あて意見書等から判断するところ、米軍機の低空飛行訓練に伴う被害は、墜落事故のおそれ及び騒音が飛行下の住民の不安を引き起こしていることに集約されると理解している。


二について
 イタリア共和国においては、民間航空機に適用される最低安全高度は、国際民間航空条約(昭和二十八年条約第二十一号。以下「ICAO条約」という。)付属書の基準(有視界飛行方式においては、都市若しくは集落の過密地上空または野外集会場上空では、航空機から半径600メートル以内の最も高い障害物から300メートル(千フィート)、それ以外の場所では、地水面から150メートル(500フィート)の高さに従っており、本年二月の米軍機による事故後も変更されておらず、また、軍用機に適用される最低安全高度は、区域ごとに設定されており、当該事故後に2000フィート(600メートル)に引き上げられた区域は、事故現場を含むアルプス地域のみであると承知している。 我が国においては、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)及び同法に基づく航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)に規定されているCAO 条約付属書の基準に基づく最低安全高度が民間航空機及び自衛隊の航空機に適用されているが、このような制度の下で、安全上の特段の問題は生じていない。他方、民間航空機及び自衛隊の航空機については、訓練飛行等において2000フィート(600メートル)以下の高さで飛行することがあるところ最低安全高度を2000フィート(600メートル)に引き上げた場合には、これらの飛行に支障が生ずることとなる。


四について
 過去十年間において航空法第七十六条の2に基づく異常接近に関する機長報告のうち米軍機が関連したものは七件あるが、調査の結果、異常接近と判定されたものはない。また、米軍機との異常接近に関する報告の件数についても、増加しているという事実は認められないほか、このうち米軍機が意図的に接近したと認められるものもない。なお、異常接近を防止する対策として、異常接近に関する報告後の調査が終了した時点で、異常接近であったか否かを問わず、その都度、航空安全の見地から民間航空機に近づいて脅威を与えるような飛行を避けるように米軍に対して申し入れを行っている。


五について
 自衛隊は、最低安全高度に関する航空法の規定等を遵守し安全に配慮しつつ、市街地、原子力施設等の上空を極力避けた飛行経路により、飛行訓練を行っているところである。最低安全高度以下の飛行が必要な場合には、同法第八十一条ただし書きの規定に基づく運輸大臣の許可を得て、必要に応じ、公海上、演習場等自衛隊の施設の上空等において航法訓練、対地対艦攻撃訓練等を行っている。

(以上が答弁書)


RIMPEACE編集部より
「民間航空機及び自衛隊の航空機については、訓練飛行等において2000フィート(600メートル)以下の高さで飛行することがある」とのこと。自衛隊機や民間機がどこで低空飛行を行っているのか、先ずはっきりさせて欲しいものです。


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