オスプレイのハワイ墜落事故報告を見る−1

開発段階の検査不足のツケが今

今年の5月17日にMV-22オスプレイがハワイで起こした墜落事故について、太平洋海兵隊は11月23日に「事故調査が終わった」とする簡単なメモをリリースした。

このメモによれば、事故の主因はオスプレイのパイロットの着陸時の判断ミスだ。ただしこの飛行に規則違反はない。砂塵が舞い上がっている中を着陸しようとして左エンジンがストールした。そんな中で着陸しようとしたパイロットが悪い。正しいリスク評価ができていれば、着陸するかやり直すか、フライトのコースを変更するか、着陸場所を変えるかして砂の密度が濃い空間を避けられtだろう。
エンジンがストールしたのは、みんなパイロットが悪い、と言いたげな報告メモだ。「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、みんなパイロットが悪いのよ...。」

砂塵の中の着陸テストがきちんと行われないまま、オスプレイは海兵隊に配備された。2007年9月26日号のタイム誌に掲載された「V-22オスプレイ 空飛ぶ恥」(マーク・トンプソン)は、開発段階のテストの実施が恐ろしいくらいに省略されていたことに触れている。
「2000年の致命的な墜落に関する調査で明らかになったことは、航空機配備を急いだため、海兵隊は危険なことにテストプログラムをはしょっていた。異なるスピード、重量、その他の要素を組み合わせて行われる、テストパイロットによる着陸テストの回数が期限に間に合わすために半分に減らされた。しかもその減らされた飛行テストで実施されたのは3分の2だけだった。このような傾向は続く。」
「また、砂あらしのテストをめぐっての論争もあった。砂漠のような地形のところに着陸するとき砂塵あらしを起こすというV-22の傾向についても検査されなかった。ペンタゴンのトップの試験官は『異常に雨の多い春で、その結果大量の植物が生え茂り、着陸テストをしようにも、ひどい砂ぼこりを出す環境ができなかった』と言っている。しかし、計画は継続した。V-22の砂塵の中での飛行能力に対する警告があったにもかかわらず。」(翻訳:山鹿順子 オスプレイ配備の危険性(七つ森書館)に収録)

配備後の「砂塵の中での飛行能力」の検査は行われなかった。そして砂塵の中でエンジン・ストールを起こす事故が3件(うち一件はネヴァダでのクラスAの墜落事故)、原因が砂塵であることが疑われる飛行中の出力の急激な低下が6件、調査の中で現れた。(ハワイの事故調査の中間報告を入手したエイビエーション・ウィークの記事)
砂塵の中を飛ぶ検査をサボったツケはすでに何度も請求されている。これでも「パイロットの判断ミス」を主原因として事故調査を完了させるのだろうか?

事故報告が出されると、日本政府は間髪を入れずに「オスプレイの配備計画に変更なし」と発表している。欠陥品を買わされようとしているのが読めない人たちに日本のかじ取りが出来るのかな?

(RIMPEACE編集部) 


オスプレイが離着陸するところに砂塵あり。米アフリカ軍のニュースページより


2015-11-24|HOME|