オスプレイのハワイ墜落事故報告を見る−4

アフガンCV22墜落事故も同じ原因か

2010年4月、アフガニスタンで飛行中のCV−22オスプレイが墜落した。調査担当者がオスプレイのエンジントラブルに焦点を当てようとしたが、上司の高級将校がその結論を退け、墜落をパイロットのせいにした。

北関東防衛局が、CV−22の横田配備の地ならしに、基地周辺自治体に説明して回った時の資料「CV−22オスプレイについて」(平成27年5月)には、CV−22の事故についてのQ&Aが載っている。一部を抜粋する。


資料「CV−22オスプレイについて」9ページより

防衛省が原因不明としているこの事故について、エイビエーション・ウィークが紹介するハワイの事故の予備調査報告は、アフガニスタンのオスプレイの事故の問題点を再提起している。
エイビエーション・ウィークは、10月19日付けの記事でこのアフガンの事故について書いている。
「ハワイの事故で新たに見つかった危険因子は、アフガンの事故のについての情報と類似している。」「ハーベル准将をトップとするアフガンのCV−22事故調査委員会は、墜落現場の状況から、事故機は突然パワーを失い墜落した、と結論付けた。」「事故調査委員会は、左エンジンの微粒子分離装置が、事故の直前に砂塵の中で機能しなくなり、それがパワーロスにつながったと考えた」

しかし調査委員会を統括する空軍特殊作戦副司令官はその結論を覆した。「墜落前2秒以内のエンジン故障の可能性は、ほとんど影響ないと評価される、と副司令官は書いた。しかし、ハワイではそれが起きたのだ」

「ハーベルは今この新しい知見は、アフガンの事故についてのもっとも強力な説明だ、とエイビエーション・ウィークに語った。事故機は200フィート以下の高度から、分速2000フィートの降下率で落ちた。もし機体に十分なパワーがあったなら、パイロットは着陸を中止して飛び上がり、近くの前進基地に戻っただろう。」
ハワイでのオスプレイの墜落事故原因の追究が、5年前のうやむやになったアフガンでのCV−22の事故調査の結論を考え直す必要性を改めて明るみに出した。防衛省が言うところの「原因不明」の事故原因が再調査されるかもしれない。

事故原因がはっきりすることは、防衛省にとっても無条件で喜ばしいことなんだろう。たとえその原因が長期間にわたって修復不能であり、オスプレイの自衛隊への配備が遅れることになったとしても。

さらに衝撃的なことを、ハーベルは語っている。
「事故調査委員会は、オスプレイが突然のパワーロスにどんなふるまいをするか研究した。パイロットが最大パワーを要求しても、壊れていない方のエンジンはデジタル制御システムによりそれなりのパワーしか出さない。そのパワーではブレードのピッチを変えることを求めない。飛行制御装置は、ブレードのピッチよりもブレードの回転を上げることを優先する。その結果ピッチは変わらず回転数だけが上がり、故障していないエンジンがオーバーワークになり、コンプレッサーがストールする」

二つのエンジンが壊れる事象は独立ではなかったのだ。それぞれを格納庫の中でストレスなしに動かした時の故障率の二乗が、オスプレイの両方のエンジンが止まる確率だ、とは言えなくなった。 実際の飛行では、オスプレイの構造上不可避な砂塵の中での離着陸でエンジンの故障率は跳ね上がる。片方が突然止まった時にもう一方のエンジンも止まる可能性が高い。防衛省が沖縄や岩国、横田、木更津などで行っている安全性に関する説明は、その根拠が崩れてしまった。

(RIMPEACE編集部) 


演習地の着陸帯で、エンジンの砂塵による影響をテストする空軍CV−22(USAF PHOTO)


2015-12-6|HOME|