オスプレイのハワイ墜落事故報告を見る−5

オスプレイの非力さの証明、アラビア海の事故でも

ハワイ墜落事故報告を見る1〜4で、オスプレイのエンジン回りの弱点、出力低下の際のパフォーマンス、そして防衛省の言う「オスプレイの安全性」のウソがこの事故で明らかになったことを示してきた。追補として、アラビア海でMV−22オスプレイが揚陸艦から離艦して海に落ち、一人が死んだ2014年10月1日の事故について、エンジン出力の話に絞って事故報告をふりかえってみる。

サンディエゴユニオントリビューンが2015年6月30日に報じた事故報告によれば、エンジンの出力が20パーセント少ないメンテナンス・モードで離艦したオスプレイが、海面に落ちて乗組員2人が脱出(うち一人が水没して行方不明で死亡宣告)、燃料を大量に捨てたオスプレイが離水に成功して揚陸艦に戻った、という。
事故直後の米軍の発表及び報道で、空中でエンジンパワーが無くなり海に落ちた、という状況だと筆者は信じた。エンジン2基が停止してのパワーロストだと思った。でもそれは間違いだった。
エンジンは止まらずに、8割の出力は出ていた。それでもオスプレイは落ちた。

防衛省はオスプレイは片方のエンジンが止まっても「1基のエンジンのみで両翼のローターを回転させ飛行継続可能」(2012年9月19日 MV-22オスプレイ オートローテーションについて)と主張して安全性を強弁して、普天間への米海兵隊オスプレイの配備をバックアップした。
片方のエンジンが止まれば出力は半分、片方のエンジンをストールしない程度に早く回しても、せいぜい6割の出力しか出ない。8割の出力でも落ちてしまう(しかも乗員4人というごく少ない人数で)オスプレイが、必死になって6割の出力で飛行を継続するのは、よほど条件がいい時に限られるだろう。少なくとも高度が低くて位置エネルギーを飛行可能な運動エネルギーに変えることが出来なければ、8割の出力で落ちたアラビア海の事故とおなじ結果になるだろう。防衛省のいう「オスプレイの安全性の根拠」は、また一つ崩壊した。

米海兵隊がリリースしてサンディエゴユニオントリビューンが掲載した、オスプレイが海面でもがいている写真を見れば、佐賀空港の沖合で海苔の養殖をしている人たちはなんと思うだろう。しかもオスプレイは積んでいた燃料を海中に捨てて軽くなって離水を可能にしたのだ。養殖の海面が油だらけになる事態は、想像もしたくないことだろう。

佐賀空港の沖に揚陸艦やヘリ空母「いずも」がはいってくることは考えられない。しかし佐賀空港がオスプレイの基地となれば、それは不沈空母ならぬ「不沈揚陸艦」となって、オスプレイが海面付近を飛ぶことになる。

(RIMPEACE編集部) 


揚陸艦マキン・アイランドの横に落ちたオスプレイ(PHOTO USMC, SanDiegoUnion 掲載)


2015-12-8|HOME|