パイロット無罪判決、被害者家族らの訴え



 98年2月3日のイタリア・カバラーゼのゴンドラ墜落事故で、低空飛行の結果ケーブルを切断した米海兵隊EA6Bのパイロットが、軍事法廷で無罪を言い渡された。部隊の使っていた地図にこのケーブルカーが記載されていなかったこと、事故機のレーダー高度計が故障していたこと、部隊のパイロットたちは、高度制限が1000フィートから2000フィートになったことを知らなかったことなどから、パイロットのアシュビー大尉は罪に問われない、ということだそうだ。
 アシュビー大尉の民間弁護人が判決後に語ったように「判決は、この事故は訓練中の出来事であり、罪にはならないことを示している」のだ。訓練中の事故は、パイロットが意図的に規則を犯したことを証明しない限り、罪に問わないということなのだろう。命令を受けての行動中の出来事が罪に問われては、誰も命令に従わなくなるという、軍隊特有の理屈で、20人の犠牲者を出した事故の責任はあやふやなままだ。
 外電が伝える、被害者の家族の声、イタリア政府関係者の声の中で、あまり新聞に載っていないものを紹介する。


「誰に責任があるんですか?パイロットが有罪でないのなら、誰に責任があるんですか」(被害者の妻)

「私は夫を1年前に埋葬した。判決が出た今日は2度目の埋葬だと感じる」「アシュビー大尉が遺憾の意を記者たちに表明したが、何故直接遺族たちに言わないのか」「すべての普通の人は、パイロットが有罪であると言っていた。陪審員と弁護人だけが無罪だと考えていた。私にはそんなことは理解できない」(被害者の妻)

「私の父と姉を含む20人を殺した人間が無罪になるなんて理解出来ないし、ショックを受けた」「この事件について責任がある人が必ずいる。もしパイロットでないのなら、彼の管理者の責任かもしれない」(被害者の家族)

「イタリアの低空飛行禁止について全く考慮しないこの判決に怒りを覚える。この観点からすれば、結局ケーブルカーに乗っていたスキーヤー達が悪いということになるではないか」(イタリア下院国防委員長)

「多数の死者と、これほど明確な責任にもかかわらず、このような判決が出たことは、ごうまんと言い逃れに他ならない」(同外交委員長)

「人々がどこの国の機体でもこのような飛行を禁止するようイタリア政府に要求することは正しい」(アビアノ市長)

「戦争の道具が裁判で守られた結果は、20人の犠牲者の全ての関係者への攻撃だ」(カバラーゼ市長)


 これらの叫びは、いつ日本で叫ばれてもおかしくない状況にある。
 地図に記載が無かったことが大事故の一因となっていたのだから、日本の低空飛行ルートを飛ぶ米軍パイロットたちが使う地図を公表させ、詳しくチェックすることが緊急の課題だろう。インディペンデンスが出港し、岩国の滑走路がクローズされている今は、低空飛行ルート下の自治体がその地図をじっくりと調べる時間的な余裕がある時期でもある。

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