推定・中国原潜と在日米軍


横浜ノースドックに2隻並んでいた米海軍音響測定艦(10.19 撮影)、10月22日にそろって出港した

沖縄・先島の領海を侵犯した中国の原潜を、最初に発見したのは米軍だったということが徐々に明らかになってきた(日経 04.11.14、共同 04.11.16)。 さもありなんと思うが、関連する在日米軍情報を組み合わせて、米軍が発見した原潜の情報が海自に引き継がれるまでの流れを追ってみよう。

「米軍の偵察衛星が先月下旬、中国の寧波とみられる海軍基地近くで浮上している中国原潜を捕捉。間もなくその原潜が潜行したため動向を探っていた」(日経 11.14)。
10月22日、曳航ソナーSURTASSを曳いて潜水艦の音を聴取して、位置を特定する音響測定艦が2隻、横浜ノースドックから出港した。そのうちの1隻、インペッカブルは、11月11日にノースドックに戻ってくる。原潜追跡が米軍から海自にバトンタッチされた直後のことだ。
もう一隻の音響測定艦エフェクティブは、台風25号のフィリピン近海への接近を避けるように、11月17日から18日朝に那覇軍港に入った。通常は東シナ海からフィリピン近海が、哨戒海域となっているのだろう。
横浜ノースドックへの寄港パターンからは、日本周辺海域には、通常、2隻の音響測定艦が配備されていることがわかる。今回日本周辺海域に配備されていたインペッカブルとエフェクティブの2隻が、広い海域に潜む中国の原潜を探し出したと考えられる。

原潜の位置が特定されたあとの追跡は、P3C対潜哨戒機の仕事だ。「日本領海を侵犯した中国海軍所属の原子力潜水艦が、石垣島の南海域で海上自衛隊のP3C哨戒機に捕捉される前、米グアム島沖から米海軍のP3C哨戒機の追尾を受けながら先島諸島・石垣島周辺まで進んでいたことが政府関係者の証言で16日、分かった」(共同 11.16)
広い海域をP3Cだけで探そうと思えば、海域を分担してソノブイをばらまく大仕事になる。しかし、位置が特定された潜水艦を追尾するなら、交代で一機が上空を飛行すればよい。嘉手納基地のP3Cの動きがそれほど激しいものではなかったというのもうなづけるところだ。

原潜が追跡されれば、当然中国海軍のリアクションが予想される。艦隊と海軍司令部の間で交わされる通信の量、発信場所などを探るのは、嘉手納に展開する海軍や空軍の電子偵察機の役目だ。海自にバトンタッチされる以前から、RC135W、RC135U、EP3が嘉手納基地から連日飛んでいた。それも、北朝鮮監視のために北向きに飛ぶのとは明らかに飛行方向が違っていた。
10日以降、EP3以外の飛行頻度は減ったという。何時の間にかRC135Uが嘉手納から姿を消し、RC135Wも連日は飛ばなくなった。日本政府が海上警備行動を発令し、海自が「国籍不明」の潜水艦の追跡劇を開始してからは、中国海軍も表だった動きは控えたのかもしれない。

偵察衛星探知とP3C追尾の間をつないだのは、横浜ノースドックから出た音響測定艦だった。中国海軍の動きを追ったのは嘉手納に常駐する電子偵察機だった。もちろん、これは仮説だ。ただ、各基地の監視結果との整合性はある仮説だ。そして、在日米軍基地が偵察基地として有機的に組み合わされていることが、この仮説の有力なバックデータとなっている。

(RIMPEACE編集部)


11月18日朝、那覇軍港に入港していた音響測定艦エフェクティブ


離陸するRC135W。手前は米海軍のEP3(11.19 嘉手納基地)


P3C対潜哨戒機が並ぶ嘉手納基地(11.19 撮影)

'2004-11-22|HOME|