駆逐艦チャンフーン、南シナ海に走る


今回の長期航海に出発する直前、横浜ノースドックに停泊する音響測定艦インペッカブル(08.12.21 撮影)


ハワイ出港後初めてホワイトビーチに寄港したチャンフーン(DDG 93)(再掲)(09.2.1 世嘉良 学 撮影)

海南島の南で、中国原潜の音紋を収集していると見られる音響測定艦インペッカブル(T-AGOS 23)に護衛がついた。
『米海軍がハワイのパールハーバー(真珠湾)基地に所属する最新鋭のイージス駆逐艦「チャン・フーン」を南シナ海周辺に派遣したこと が12日、明らかになった。南シナ海で中国艦船が米海軍の調査艦に異常接近し、航路を妨害した問題を受けた対応で、米調査艦「インペッ カブル」を護衛する。11日に同艦と合流した』(3月13日、NIKKEI NET)

この記事に出てくる駆逐艦チャンフーンは、第31駆逐戦隊(DESRON31)所属で僚艦のホッパーとともに2月から日本近海に姿を 見せている。2隻で組んで沖縄近海での対潜特別訓練やマルチ・セイル訓練に参加し、横須賀の第15駆逐戦隊所属艦などと一緒に動いて いる。
チャンフーンは当初、強襲揚陸艦ボクサーの戦闘グループに加わると発表されていた。その後ボクサー戦闘群には大西洋艦隊からやってき た駆逐艦ザ・サリバンズ(DDG 68)が加わり、チャンフーンは西太平洋にとどまることになったようだ。

インペッカブルが妨害を受けたと米軍が発表した時、ステニス空母戦闘群は韓国に向かっていた。またボクサー戦闘群はインド洋をアデン 湾に向かっていた。南シナ海には米軍の戦闘艦がいない状況だった。
日本近海でフォールイーグル演習支援やミサイル・ディフェンス(MD)任務のために日本近海に散らばっていた戦闘艦の中から、チャン フーンが南シナ海に急派されたと見られる。

僚艦ホッパーではなくてチャンフーンが派遣されたのは、ホッパーがMDシステム搭載艦だったために「北朝鮮のミサイル発射」に 備えた第7艦隊の艦船の配置に組み込まれていたためではないだろうか。
チャンフーンが海南島南海上でインペッカブルと合流した日に、横須賀から駆逐艦カーティスウィルバーが出港している。チャンフーンが 抜けた「穴」を埋めるために出て行ったと思えるタイミングだ。

音響測定艦の任務航海は最大90日といわれている。インペッカブルは1月27日まで那覇軍港に短期間停泊していたから、単独なら 4月までは補給なしでも行動できるだろうが、駆逐艦が1隻東シナ海あたりからすっ飛んできたとなると、燃料・食料の補給が必要に なる。13日に佐世保を出た戦闘補給艦サンノゼが南シナ海に向かう可能性が強い。
駆逐艦が到着する以前から、嘉手納のP3Cがこの海域をカバーして船舶情報などをキャッチしていたことは間違いない。
2001年4月、この海域で米軍のEP3が中国の戦闘機と接触して海南島の中国軍基地に緊急着陸している。軍艦や軍用機が集結しだすと、新たな 緊張状態が生まれることも十分考えられる。

(RIMPEACE編集部)


2009-3-14|HOME|