北海道で実射の高機動多連装ロケットシステムHIMARS


トラックもどきの車両がロケット発射台に変身。HIMARSの真の姿だ(米海兵隊のホームページより)

  横浜から矢臼別演習場に運ばれたHIMARS(High Mobility Artillery Rocket System高機動ロケット砲システム)の射撃訓練が、8月19日から開始されるスケジュールだ。 米海兵隊と陸上自衛隊の共同演習「ノーザンヴァイパー」の一環だ。

 HIMARSの特徴は、一つには強力な破壊力と長距離の射程を持つロケット砲だということだ。その射程距離は155ミリ榴弾砲よりもずっと長い。
とりわけ、旋回式ランチャーに米陸軍の地対地ミサイルATACMS1基を装填したコンテナを載せた場合には、射程は300kmにも及ぶという。

 もう一つの特徴は、それだけの威力を持つ兵器でありながら、小型軽量であり迅速な輸送展開が可能で、トラックとしての自走距離も長く、機動性が高いということだ。世界規模での 機動的で柔軟な兵力展開を追求する現代の米軍の戦略に適合的な兵器なのだ。

 米国のシンクタンク、戦略予算評価センター(CSBA:Center for Strategic and Budgetary Assessment)が2016年11月に発表した提言には、南シナ海における戦闘が生じた際に、 海兵隊が「敵」に対して使用可能な兵器の例として、このHIMARSが写真入りで紹介されている。
戦略予算評価センターは、米軍のエアシーバトル構想を初めて詳述して提言したシンクタンクとされ、米軍に強い影響力を持つ。

 そのような強力なミサイル兵器が横浜で船積みされ、北海道の矢臼別演習場に運ばれ、日米合同演習で初めて実弾射撃訓練が行われたということだ。

 沖縄の海兵隊が、強力かつ機動性の高い装備を使って今後も世界規模に活動をしていく姿勢、を象徴していると同時に、米軍は今後、彼らにとっての軍事的合理性に沿って、日本全土 を利用していくつもりだ、という事実上のアピールでもあるのだろう。

 さらに問題なのは、陸上自衛隊との共同演習でHIMARSが使用されたということだ。自衛隊は、HIMARSの使用が想定されるような形態の戦闘にコミットしようというのだろ うか。
少なくとも、そのような意図を持っていると他国の人びとから見られることを承知のうえで、HIMARS射撃を含む共同演習を実施しているのだろう。
 しかしそれは明らかに、私たちの憲法を踏みにじる振る舞いではないのか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


2017-8-21|HOME|