LCU、ストライカー積んで沖縄から横浜ノースドック入港


8月29日にストライカーなどの軍用車両を積んでノースドックに到着した陸軍LCUブロード・ラン(17.8.29 星野 撮影)


ブロード・ランにはストライカー5両とタンクローリーが積まれていた(8.30 頼 撮影)

   8月29日の午後、米陸軍大型揚陸艇ブロードラン(LCU 2007)が横浜ノースドックに入港し、EバースのLCUカラボザ(LCU 2009)に横付けした。

 ブロードランは、カラボザと同様、「保管」場所だったはずの横浜から今年の1月以降沖縄に派遣され、輸送業務や軍事演習支援業務に使用されているLCUだ。

今回、沖縄のホワイトビーチを8月26日に出港して29日に横浜に現れたブロードランには、暗緑色のストライカー装甲車5両と砂漠塗装のトレーラー型タンクローリー1両が積まれていた。

タンクローリーは、HEMTT(Heavy Expanded Mobility Tactical Truck:重高機動戦術トラック)シリーズの、M978 FUEL TUNKER と呼ばれる米陸軍の車両のようだ。
このタンクローリーには、1863という番号が記入された赤いプラカードが付けられていた。1863という数字は、タービンエンジン航空燃料を表す国連番号だ。つまり、タンクローリーは、タービンエンジン用航空燃料を積む車両であることを示す危険物表示を付けていたということだ。

 翌8月30日にブロードランは、Eバース側からみて埠頭の「裏側」にあたる「すべり」のところに移動して、積んでいたストライカー装甲車5両とタンクローリー1両を自走で上陸させた。

 上陸したストライカー装甲車とタンクローリーは、いずれもその場で日本の民間運送会社のトレーラーに載せられて、シートで覆われた。さらに、ブロードランに積まれていたようには見えなかったのだが、どこからか現れた砂漠塗装のハンヴィー1台にも、トレーラーの上でシートが掛けられた。

 米軍車両を積んだ7台のトレーラーは、しばらくノースドックの中央部に集まって停まっていたが、同じ8月30日の14時30分頃に動き出してBバース付近でゲートに向かって並び、やがて、1台ずつゲートを通り瑞穂橋を渡って外に出て行った。


ブロードランから「すべり」を使って自走で出てきた陸軍のタンクローリー(8.30 頼 撮影)



「すべり」でストライカーとタンクローリーを降ろして、再びEバースに戻ってきたブロードラン
後方はシートをかけたストライカーなどを積んだトレーラーの群れ (8.30 星野 撮影)

 今回、ブロードランが運んできたタンクローリーや、ノースドックに現れたハンヴィーの運転席のドアに書かれていた6桁の部隊識別番号は、車両が米陸軍所属であることを示していた。ストライカー装甲車も、米陸軍の車両だ

。  8月25日の陸幕広報部発表の陸上自衛隊ニュースリリースによると、今年の陸自と米陸軍の合同軍事演習「オリエント・シールド」は、東富士演習場などで9月8日から25日にかけて行われる。米軍側は、第25歩兵師団第1ストライカー旅団戦闘団などの約1200人が参加する。

南関東防衛局の8月31日の発表によれば、この「オリエント・シールド」演習の期間中である9月10日と11日に、米海兵隊のMV−22オスプレイ6機が東富士演習場で離発着訓練を実施する可能性があるという。

 つまり、今回、横浜からトレーラーが搬出した5両のストライカー装甲車とタンクローリーそしてハンヴィーは、いずれも「オリエント・シールド」に参加する米陸軍の車両で、東富士演習場に送られたのではないか。タービンエンジン用航空燃料を積むタンクローリーが、車両の給油のためのものなのか、オスプレイなど航空機の給油のためのものなのかは不明だが。

 さらに、一足先に8月19日にLCUカラボザが横浜に運び込んだ3つの移動式射撃訓練セットも、もしかしたら「オリエント・シールド」演習の実施と関係があるのかもしれない。


ストライカーなどの軍用車両を載せてノースドックの出口に向かうトレーラーの群れ (8.30 星野 撮影)

   なお、8月25日に行われた日米合同委員会で、今回の「オリエント・シールド」実施のために、9月7日から13日にかけて横浜ノースドックの土地約6000uを日米で共同使用することが合意されたという。

横浜ノースドックでは、今年に入ってから2回、「防災」を名目に掲げた日米合同演習が矢継ぎ早に実施されてきた。そしてついに今回は、「防災」の名目すら掲げない、あからさまな軍事演習の一環としての使用だ。

陸幕広報部によれば、今回の「オリエント・シールド」演習の目的は、「陸上自衛隊及び米陸軍の部隊が、それぞれの指揮系統に従い、共同して作戦を実施する場合における相互連携要領を実行動により演練し、相互運用性の向上を図る。この際、東富士演習場の良好な訓練環境を最大限に活用するとともに、方面区を跨ぐ機動展開について演練する」ことなのだという。

 今回の演習で米軍と自衛隊は、横浜で一体何をしようとしているのだろうか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


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