米陸軍LCU、奄美から横浜へ陸自装備運搬


LCUカラボザに積まれる陸自車両


名瀬港に寄港し、陸自車両を積み込む陸軍LCUカラボザ(17.11.10 読者 撮影)

本来、横浜ノースドックに係留保管するだけで使用しない約束だった米陸軍大型揚陸艇(LCU)を使って、米軍の揚陸艇で陸上自衛隊を奄美大島から横浜まで運ぶ訓練が行われた。

 11月10日、奄美大島の名瀬港にLCUカラボザ(LCU 2009)の姿があった。カラボザは、同じLCUのブロードラン(LCU 2007)とともに今年1月に横浜から沖縄に派遣され、 それ以降、東アジア一帯を結んで演習支援や輸送業務に使用されている揚陸艇だ。カラボザは11月9日に沖縄のレッドビーチを出港して名瀬にやってきた。その直前、11月6日にも カラボザは名瀬に入港しているのだが、一旦沖縄に戻っていた。

 11月10日の名瀬港では、陸上自衛隊員たちが米揚陸艇カラボザに陸上自衛隊の車両を自走で複数積み込んだ。撮影された写真を見ると、各種トラックの他、荷台部分にシートで 覆った81式短距離地対空誘導弾発射装置(ミサイル発射装置)を載せているトラックや、対上陸舟艇用の機雷を敷設する94式水際地雷敷設装置を積んだ水陸両用車も自衛隊員たちの手 によって米陸軍揚陸艇カラボザに積み込まれている。



LCUに積まれていく陸自車両と、作業中の陸自隊員(17.11.10 読者 撮影)

 名瀬港で陸自の車両を載せたカラボザは横浜に向かい、11月13日の夕方遅く18時頃にノースドックに入港した。米陸軍の揚陸艇に地対空ミサイル発射用トラックや機雷敷設用 水陸両用車などの車両を持った陸上自衛隊を載せて、奄美大島から横浜まで長距離輸送する訓練を行ったということだ。

 昨年(2016年)7月にも、LCUコアモ(LCU2014)が佐世保から陸自の装甲車などの車両を横浜ノースドックに運んでいる。その写真を掲載した米軍の画像HP、DVIDSの 記事は、米軍の艦船が陸自車両の地点間海上輸送を行うのは初めてのことだと報じていた。他方、防衛省は昨年9月14日、福島みずほ参院議員の資料請求に対して2012年度日米共同 統合演習(実働演習)及び2015年度豪州における米海兵隊との実動訓練においても米軍艦艇を利用した輸送を実施した例があると回答してはいるが、米軍と自衛隊の一体化の動きが 近年急速に強まっていることは確かだろう。

 横浜ノースドックでは今年3月と6月にも「防災」の名をつけた日米合同演習が行われ、LCUに陸自車両や隊員を載せて運搬する訓練が行われている。さらに、今年9月の米軍の オリエントシールド演習の際には、ノースドックに降ろされた米陸軍の物資や車両の一部を陸自のトレーラーで陸自の隊員が運ぶ姿が見られた。

 上述の福島みずほ参院議員の資料請求に対する回答のなかで防衛省は、昨年7月の米軍揚陸艇による陸自装甲車などの輸送の根拠法は日米物品役務相互提供協定(ACSA)第2条第1項 だと述べている。DVDISの記事によれば、昨年7月の輸送は、米国で行われる米陸軍と陸自の共同演習ライジングサンダーに参加する陸自車両と隊員を横浜に輸送するというもの だった。

 今回の輸送はいかなる名目で根拠にもとづくものなのだろうか。政府、防衛省から市民に向けた説明は未だ何もなされていない。日本社会に暮らす人びとには具体的な動きをほとんど 知らせないまま、そして国会での具体的な議論もなされないままに、自衛隊と米軍は現場で「日米軍事一体化」の既成事実を急速に積み上げているのだ。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


11月13日にノースドックに寄港後、車両を陸揚げしてDバースに停泊中のLCUカラボザ(11.17 頼 撮影)


2017-11-23|HOME|