横浜ND備蓄の陸軍舟艇、安保極東条項超える任務想定(下)

 ところで、米軍が日本に居座っている法的根拠とされているものは、日米安保条約である。
「日本国の安全に寄与し、並びに極東における平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許され る」(第6条)という条文を根拠として、米軍が日本に基地を置くことが許されているということになっている。
あくまでも日本と極東における「平和及び安全の維持に寄与するため」なのであって、米太平洋軍の担当地域への対応のために駐留が許されるとは、どこにも書かれていない。

 では、安保条約に基づいて日本に駐留する米軍が対応することが許されるとされる「極東」とはどこか。これは1960年の安保改定をめぐる国会審議の重要な論点の一つだった。

「極東の範囲についての御質問でありますが、この極東の意義につきましては、かねて外務大臣がお答えを申し上げておるように、フィリピン以北、日本の周辺という解釈でございます。 (中略)大体この条約は、いわゆる極東の地域において、平和と安全が乱されて、それが日本の平和と安全にも非常に密接な関係があるというようなことから、日米両国の関心の強い地域 を示しておるわけでありまして、御質問の中国大陸や沿海州は、この意味において含まれないものと解釈いたします」(1960年2月8日衆議院予算委員会、横路節雄衆院議員(社会党)の 質問への岸信介首相の答弁)

「この意味で、実際問題として両国共通の関心の的となる極東の区域は、この条約に関する限り、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して、武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域とい うことになるわけであります。こういう区域としては、大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれるとい うことであります」(1960年2月26日衆議院日米安全保障条約等特別委員会、愛知揆一衆院議員(自民党)の質問への岸信介首相の答弁)

つまり、日本政府の説明によれば、安保条約のもとで在日米軍が「武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域」とは、「フィリピン以北並びに日本の周辺」であって、それ以外の地域は含ま れていない。


FBOの公告の中の横浜ノースドック関連部分。赤線は編集部

 今回の公告「Enhanced Army Global Logistics Enterprise (EAGLE)」は、安保条約の下では許されない任務を与えられた舟艇が横浜に配備されていることを、米国政府自ら明言してい るものなのだ。

 折しも2月8日、横浜ノースドックのAバースに係留されているLT(Large Tug 大型タグボート)のMGナサナエル・グリーンが試験航行を行った。
交通量の多い横浜港周辺にもかかわらず、AISを切ったままの試験航行だった可能性もある。このMGナサナエル・グリーンは、まさにAPS-4で横浜に配備されている舟艇類のうちの1隻 である。試験航行の2月6日には、クレーンバージに横付けして給油を行っていたことが確認されている。
 今回の試験航行は、あくまでも定期的なメンテナンスの一環としてのものなのか、あるいは米韓合同演習に向けた動きが始まったということなのかは不明だ。

 しかし、いずれにしても、APS-4によって横浜に持ち込まれている舟艇類は、単に「保管」されているのではなく、あくまでも使用を前提として配備されているのである。そして、その 任務には、日米安保条約すら逸脱した軍事行動も含まれているということなのだ。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


横浜港内を航行するラージ・タグ、MGナサナエル・グリーン(18.2.8 星野 撮影)


2018-2-13|HOME|