横浜NDのLCUシダーラン、沖縄に


9月17日の午後、翌朝の出港を控えて横浜NDで準備作業を行うLCUシダーラン。マストには米陸軍輸送科のえんじ色の旗が掲げられている。
(9月17日、星野撮影)

 9月18日朝、LCU(米陸軍大型揚陸艇)シダーラン(LCU2010)が横浜ノースドックを出港した。
 21日に沖縄のホワイトビーチに到着したシダーランは、22日には同港を出港し、南西方面の海域に向かっているようだ。

 2017年1月から沖縄に派遣され、東アジアや東南アジア地域で米軍の輸送業務を担う小型輸送船として使用されてきたLCUカラボザ(LCU2009)が横浜ノースドックに戻ってきたのは、8月 3日。その前後から、カラボザに代わってシダーランを派遣するための準備作業や訓練が、ノースドックで行われていた。

 カラボザやブロードラン(LCU2007)を現役輸送船として沖縄に送り込み、また今回、シダーランを送り込んだのは、The Pacific Utility and Logistic Support Exercise-Watercraft(PULSE-W) と呼ばれる米太平洋陸軍の行動の一環だ。

 米陸軍HPの記事によればPULSE-Wは、米陸軍艦船を太平洋地域に派遣して陸軍水兵の訓練を行いつつ、物資などの輸送業務を行うことでこの地域での米軍の活動を支援するもので、2013年に 開始された。
 今回、カラボザからシダーランに使用するLCUが交換されたのだが、米軍HPの動画によれば、この交換作業それ自体も、米陸軍の訓練の一環だった。

 横浜ノースドックに係留保管されているLCUを使用するPULSE-Wには、民間貨物船のチャーター費用を節約するという目的も存在する。しかし、PULSE-Wによって、横浜港の、米軍の兵站活動を支 える拠点としての機能が強められていることはまぎれもない事実だ。そして横浜ノースドックは、「在日米軍」ですらない部隊も含む、米陸軍の訓練場としても使用されているのだ。

 LCUなどの舟艇類を横浜ノースドックに大量に持ち込んだ時、米軍は、あくまでも「保管」するだけだと約束していたはずだ。一部であれ舟艇を現役輸送船として日常的に使用し、また、横浜港 をその訓練場として使用するなどという説明は、一切行われていない。なし崩しに約束を破ることは許されない。

 2002年夏、米陸軍舟艇類の搬入計画が明らかになったとき、神奈川新聞は「横浜市によると、同ドック(引用者注:横浜ノースドック)への艦船の搬入は過去に確認されておらず、海上係留 も初めてという」と報じた(神奈川新聞2002年8月23日)。舟艇類を係留保管すること自体、ノースドックに新たな機能を追加する大きな出来事だったのだ。

その後、米軍は既成事実を積み重ね、ついには搬入したLCUを小型輸送船として軍事活動のために日常的に使用するに至った。これは横浜ノースドックの機能及び横浜港のあり方の重大な変質であ るはずだが、その過程は、何らの議論も市民への説明も問いかけも行われない中で、静かになし崩しに進んでいるのだ。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


2018-9-25|HOME|